ファイルサーバとしての拡張 - 250GB HDD×3台で 750GB -

['04/07/17] 初稿
■はじめに
■いくらあっても足りないディスク容量
 数値演算を多用する各種解析や動画エンコードのような高い CPU パワーを 必要とするような用途で PC を使用していなければ,そこそこの性能 を持ったPC を一度購入すれば,それから何年間かはパフォーマンス的にそれ程 不満を抱えずに済み,ハードウエアに対する追加投資はしなくても済むと思います. しかし, ディスク上に保存しているデータは年々増加することは想像に難くなく,また, TV録画やDVカメラで撮影した動画データを保存するようになると,急激にディスク 容量を逼迫させることになります.

 では,どのくらいのディスクがあれば充分かという問題になるわけですが,これ ばかりはPCの使用用途やデータ保有量の増加傾向を見極めないと何とも 言えません.私の場合,クライアントマシンとして使用しているマシンの場合, 基本的に120GBのディスクを1本入れ,ワーク用のデータはローカルに保存して 作業するようにしています.そしてオリジナルのデータや処理後のデータは,ファイル サーバとして使用している Terminator TU (以下,TU1号機)に保存をすることによ り,極力データの集中管理が可能になるよう心掛けています.

 このような運用形態を採ることにより,ローカルのハードディスクは 120GB のままで とりあえず問題ない(とは言え,ごく希にワーク領域が足りなくなることもあり, その際には外付けの USB2.0/IEEE1394 ディスクを接続しています)レベルに保たれて いますが,一極集中型の副作用として,ファイルサーバの空き容量には常にビクビク しながら使用することになりました.

 当初は TU1号機に120GBのディスクを2本取り付け,処理の終わったオリジナルデータ (主に写真をフィルムスキャンしたデータ)はDDS3(DAT Tape)にバックアップするという 方針で運用していました.当初はこれでうまく行っていたのですが, TV録画をバリバリ行うようになるようになり, この運用はキツくなってきました.例えば高画質(8Mbps程度)で1時間番組を録画すると 約 3GB もの容量になりますので,1週間で5本録画すると15GBになります.これを DDS3テープに待避すようにした場合,見たいときに見れないために使い勝手が 悪くなりますし, DDS3テープは1本1000円程しますので,懐的にも厳しいものがあります.また,非圧縮で DDS3 テープには1本12GB入りますが,バックアップ時間は3時間.深夜に自動で行うと しても手間がかかり面倒です.

 そこでデータは出来るだけディスク上に置いたままにし,DDS3 にはあまり頼らな くても運用出来るような方法を模索しました.その第一弾として 250GB ディスク1本増設したわけですが,データ をそちらに保存し始めたところ,あっと言う間に使用率が90%を超えました.慌てて データの整理を開始して使用率を 70%台にまで下げたのですが,いずれパンクするのは 目に見えています.そこで今回,抜本的にディスク構成の改革を行おうと 考えたわけです.

■ディスク構成変更計画
 以前,TU でディスクを 4本接続した後に FDD を使用したところ,電源容量不足と 思われる症状が発生しました.そこで今回はディスクの増設ではなく,交換という 手段を採ることにしました.具体的には,ブートディスクとして使用されている hda, データディスクとして使用している hdb の交換です.これら 2本のディスクはそれぞれ 120GBのディスクを使用しています.そして使用量は共に100GB程です.つまり,共に 250GBのディスクに交換した場合,約300GB程の空き容量が生まれることになります.
■ディスクを選ぶ
 ディスクの選定に関しては,やはり24時間運用のマシンですので, 『信頼性,価格,性能』の順で優先順位を付けて機種選定をすることにしました. また,Terminater に組み込む際の特殊な制約条件として,静音性,消費電力(発熱) という要因も考慮しなければなりません.

 そしてこれまでであれば MAXTOR 製のディスクの中から候補となるものを選択した 訳ですが,過去数年『鉄板』とも言われ,『壊れない・静か・そこそこの性能』を 謳われた MAXTOR の信頼性が地に落ちかけているようです.例えば初期不良率や 1年以内の故障率が最近はかなり高いことを伺わせる報告が多数有ります.また,最近の MAXTOR製ドライブの場合,例え 5400rpm ドライブであっても,発熱が思いの外高いという 事実はオーナーであれば気になっているでしょう.

 こちらでは MAXTOR の中でも信頼性を売りにした MaxLine IIシリーズを選択したわけですが,5400rpm の 4R シリーズや 7200rpm の 6Y シリーズはかなり評判が悪いようです.また,MaxLineII の中でも,300GB のタイプは発熱 が大きいようで,あまりお勧めできません.

 思えばハードディスクメーカーの信頼性は何年かおきに変化しており, 一昔前は IBM が良いと言われていました.当時私は DJNA や DTTAシリーズを多用して いましたが,その後 DTLA で使用1年以内での大量死事件が発生し (私の職場でも1年以内に使用ドライブの6割が故障しました)て評判を著しく落とし, それに入れ替わるように MAXTOR の評判が上がりました.確かに MAXTOR は評判通りの 堅牢性を見せ,私の身近な所で何十本か使用していますが,一昨年くらいまでに導入した物で 故障したものは殆どありませんでした(Quantam ラインのものは除く).

 ディスクの信頼性は,運用環境や運(引き)の問題もかなり大きいと考えられますが, やはり信頼性の高いと言われているメーカー製を購入する方が良いでしょう.古い Mac ユーザーであれば覚えていると思いますが,Apple 純正に使われていた Quantum 製 ディスクが,夏場にヘッド固着事故を大量に発生させた際に,多くの Mac ユーザーは 密閉型構造の Conner (現在は Seagate に合併吸収されています)製ディスクを指名 買いするようになりました.それまでは製造メーカーのことをあまり気にせず購入 する人が多かったのですが,一時期は神経質なまでに Conner 製を追い求めるユーザー が増え,ショップもディスクメーカーを明記するようになりました.閑話休題.

 改めて最近のディスクメーカーの評判を(私の主観も含めて)見てみますと, MAXTOR の評判はかなり落ちており,Seagate は良い話も悪い話もあまり聞かず (昔と比べて熱い&五月蠅いという話は聞きます),日立(IBM)は定期的に行われる サーマルキャリブレーションの音(俗に言う『猫泣き』.設定によって消すことが可能?) が五月蠅いという話を聞く他,身近な環境では,冷却面でやや不備がある場合はよく壊れて います.そしてあまり話題に上らないメーカーですが,Sumsungは壊れにくい印象 がありますが,性能があまり良くない感じがします.そして最後に WestarnDigital ですが,これは昔,1.2GB ディスクが急に前触れも無く故障する事故が多発したために 印象が非常に悪かったのですが,最近はとても評判が 良く,性能面やコスト面でも赤丸急上昇のようです.

 今回は MaxLineII のディスクが手持ちで1本余りがあったため,これを 1本使用することにし,必要となるもう1本は新規に購入することにしました. なお,ディスク容量は費用対効果を考慮して250GBにすることにしました.また,MaxLineII で固めるのも良いのですが,性能的に大幅に向上可能であることが予想される, WestarnDigital の 250GB にすることにしました.具体的な型番としては,WD2500JB です. WD2500BBは 7200rpm,Cache 2MB なのに対し,このディスク は 7200rpm, Cache 8MB という仕様の特別仕様のようです(BBはボールベアリングであり, JBは流体軸受けという説明がなされる場合もありますが,メーカーの資料には特にそのような 解説はありませんでした.リビジョンによっても変更になっている可能性があります). 値段的には 店頭でBBが15000円前後,JBが16000円前後です.価格差は1000円ほどですので,迷わず JBにすることにしました.ブートディスクとして使用すれば,パフォーマンス的にも 大きな向上が期待できるでしょう.

 気になるのはディスクの回転数が 5400rpm から 7200rpm に上昇することによる 消費電力の上昇です.消費電力が上昇するということは,発熱も上昇するということ になりますので,SmartDrive に入れた場合にかなりキツイ状況になることが想像され ます.以下の表にデータシートから計算した消費電力をを示します.

表:ディスクの消費電力 参考: 5A250J04R120L0WD2500JB
型番動作モード 5[V] 電流[mA]12[V] 電流[mA]消費電力[W]
5A250J0 シーク時 593 594 10.0
アイドル時 590 269 6.2
スタンバイ時 149 36 1.1
4R120L0 シーク時 628 587 10.2
アイドル時 582 224 5.6
スタンバイ時 116 41 1.1
WD2500JB シーク時 750 730 12.5
読み出し/書き込み/アイドル時 430 730 10.9

 データシート上では同一の項目に分類されていないため,直接比較出来ません (例えば WD の方では,純粋なアイドル時のデータが無い).また,WD では, スピンアップ時に5[V],12[V]に最大それぞれ 680[mA],2400[mA]流れるとの値も書か れていました.電力で考えると32.2[W]です.4台接続し,同時にスピンアップが発生し たとしたら,Terminator TUの150W電源ではかなりキツそうです.なお,Maxtorのデータ シート上ではこの値が見付かりませんでした.あくまでも『最大値』ではありますが, 気になる数値です.

 さて,5A250J0とWD2500JBの消費電力を比較してみますと,5400rpm から 7200rpm と 回転数が大きく上昇しているにも関わらず,シーク時の消費電力は2割程度しか上昇して いません.この程度であれば,絶対値として見ても殆ど気にならないレベルです.また, WD 製ディスクの場合,リビジョンがかなりコロコロ変更されていますので,上記のデータ シートと比較して大幅に消費電力が変更になっている可能性が無きにしもあらずです.

 と,このような判断をしまして,ブートドライブをWD2500JBにし,データディスク1を 5A250J0に交換することにしました.

■WD2500JB
■WD2500JB-00GVA0
 思い立ったが吉日,早速2004/7のとある週末に日本橋にWD2500JBを買いに行きました. IEEE1394外付けディスクとして使用する分と故障時用の予備も含め,4本購入.

本体は黒い筐体.PC-One'sで16,250円で4本購入.
ジャンパ設定情報などはこちら.WDのHDDはプライマリ/セカンダリに1台のみ 接続する際には,"Single or Master"と説明されているジャンパ設定にする必要が あるのに注意.なお型番は,WD2500のみ大きく書かれており,WD2500JB-****の"*"の 部分は左に小さく書かれています.この場合はWD2500JB-00GVA0.実はこの "00GVA0"が重要(後述)
裏面.至ってシンプルな構造です.チップ等は基盤向かって裏側に実装されて いるため,星形ドライバで外して見ないと何が使用されているか分かりません.また, チップがドライブ筐体に密着(?)していることから,チップの熱を筐体に伝え,筐体 全体で放熱しているという話も聞きます.
コネクタとジャンパ.ジャンパ設定をこの状態のママ接続した場合,CABLE Select になります

 さて,今回あまり考えずに『WD2500JB』を購入したわけですが,実はとても幸運 なことに,リビジョンが GV に変更された物が店頭に並び始めた時期であったようです. 掲示板の書き込みを読みますと,これまで販売されいた WD2500JB-00FUA0 と比較すると…

  • ・制御チップが WD70C26+SMOOTH チップに変更になっており,高周波音が押さえられている
  • 発熱が下がっている(つまり,消費電力も低くなっている)
  • 速度も向上している(らしい)

※GVで使用されている SMOOTH チップは,MAXTOR 製ドライブで採用されており, 焼損等の報告がある SMOOTH チップとは別版とのこと

 とのことであり,非常にラッキーなタイミングで偶然購入できたようです.そして 非常にアンラッキーなタイミングで FU を購入してしまった人からは,怨嗟の声が… :-)

 さて,実際に動かしてみますと,確かに音が小さく発熱も少ないことが分かります. 特に音に関しては特筆もので,SmartDrive はいらないんではなかろうかと思えるほど 静かです.そして WD 製ドライブで昔はよく発生していた相性問題ですが,1本の IDE ラインに別メーカー(今回は WD と MAXTOR)を混在させても問題なく動作しました.

■ブートディスクを WD2500JB へ交換&認識
 さて,データディスクとして使用している 5A250J0 への交換はごく普通に行えますので, 特筆すべきことはありません.問題はブートドライブの交換です.基本的には こちらのページの方法に則って行いましたが,今回は 少々手順をはしょりまして,WD2500JB を hdc に接続して fdisk と format を行い,その後 init 1を実行してシングルモードにし,そしてファイルをコピーするという方法を採りま した.また,ブート FD は kernel 2.4.26 (現在最新のVine 2.6r4 用のカーネルは 2.4.22です.2.4.26 は手動でカーネルソースから build しました)用のものではうまく ブートしなかったため,2.4.20 のブート FD を作成し,WD2500JB を hda に接続し直した 後にこの FD でブートしてliloを実行するという方法を採りました.ブートディスク交換 も2回目になると,手慣れた物です :-)

 以下,ブート時のメッセージ.

hda: WDC WD2500JB-00GVA0, ATA DISK drive
hdb: Maxtor 5A250J0, ATA DISK drive
blk: queue c0379980, I/O limit 4095Mb (mask 0xffffffff)
blk: queue c0379ac8, I/O limit 4095Mb (mask 0xffffffff)
hdc: Maxtor 5A250J0, ATA DISK drive
blk: queue c0379dec, I/O limit 4095Mb (mask 0xffffffff)
ide0 at 0x1f0-0x1f7,0x3f6 on irq 14
ide1 at 0x170-0x177,0x376 on irq 15
hda: attached ide-disk driver.
hda: host protected area => 1
hda: 488397168 sectors (250059 MB) w/8192KiB Cache, CHS=30401/255/63, UDMA(100)
hdb: attached ide-disk driver.
hdb: host protected area => 1
hdb: 490234752 sectors (251000 MB) w/2048KiB Cache, CHS=30515/255/63, UDMA(100)
hdc: attached ide-disk driver.
hdc: host protected area => 1
hdc: 490234752 sectors (251000 MB) w/2048KiB Cache, CHS=30515/255/63, UDMA(100)

 ご覧になるとお分かりのように,『250GB』となっていてもメーカーや型番によって 若干容量に差があります.ご存じのように,ディスク容量は『1000Byte = 1KByte』と して計算するため,1024単位で計算する方式との間で誤差が出る(その結果,実容量 は少なく表示される)わけですが,それとは別に,Maxtor 5A250J0 では 251000MB で あるのに対し,WDC WD2500JBでは 250059 MBとなっており,約10MB程少なくなってい ます.とは言え,この辺りは誤差の範囲内と言って良いでしょう.少し多めになってい たらラッキー,少なくなっていたとしてもあまり目くじらを立てるような問題ではありません.

■WD2500JBの使用
■WD2500JBの性能[発熱を調べる]
 交換したディスクは問題なく認識され,普通に使えるようになりました. 次に気になるのは WD2500JB を SmartDrive に入れていることもあり,発熱はどの程度 のものかということ.そしてそのパフォーマンスです.

 ではまず,使用時の温度を見てみましょう.測定環境は室温29度の環境で行い, Kernel2.4.26のドライバで行いました.また, 温度は SMART の出力する値を読むことにし, WD2500JB は SmartDrive に入れて5インチベイに取り付けてあり,比較した 5A250J0 は シャドウベイに取り付けてあるものを参照しました.

表:SmartDriveに内蔵したWD2500JBとシャドウベイの5A250J0の温度比較(定常状態)
ディスク温度[℃]
WD2500JB43
5A250J043

 と,このように,通常の利用時には全く同じ温度を示していました( 5A250J0 はしばらくアクセスが無い場合はスピンダウンする設定にしてあるため,普段はほぼ室温と 同じ温度にまで低下します).そして激しくディスクアクセスした際には,共に上記の数値 よりも +3度ほど上昇しますが,室温が30度前後の場合でも,WD2500JB が 50度を 超えることはまず無さそうです

 この結果は,室温18度の状況で計測した先の測定結果 と付き合わせますと, WD2500JB と 4R120L0 は発熱量が殆ど同じであり,SmartDrive 内蔵の 状態で激しくアクセスした際の温度上昇は,若干低めに抑えられる可能性が示唆される… という興味深い結果が見て取れます.おそらく WD2500JB の場合,熱が効率的にディスク筐体に 伝わり,そして SmartDrive の筐体に伝わるため,急激な熱の上昇が押さえられるということでは なかろうかと思います.

■WD2500JBの性能[パフォーマンス]
 次にディスクの性能を見てみましょう.今回のディスク入れ替えに際し, hda を Maxtor 4R120L0 から WDC WD2500JB-00GVA0 に交換し,そして hdb を Maxtor 4G120J6 から Maxtor 5A250J0 に交換しました.比較する意味で,これら全てのディスクで 計測したデータを以下に示します.なお,IDE ドライバは Kernel 2.4.26 の ものを使用し,テストは hdparm -tT を実行して行いました.

表:hdparm -tT の結果
ディスク Timing buffer-cache reads [MB/sec] Timing buffered disk reads [MB/sec]
4R120L0 200 37
WD2500JB 200 50.39
4G120J6 200 40.25
5A250J0 200 40.51

 計測の度に±2MB/sec程変動する場合もありますが,read 性能は上記のような結果 になりました.(write 性能は面倒なため計測していません :-))

 上記の表を分かるように,WD2500JB は頭1つ抜きん出て高速です.また,今回 カーネルを 2.4.26 に変更して計測しているわけですが,ドライバが新しくなった 関係で,以前は 35MB/sec 程度しか出ていなかった 4G120J6 において,転送レートの1割近くの上昇が認められます.そしてこれまで ブートディスクとして使用していた 4R120L0 は最も遅く,今回の WD2500JB への 入れ替えに伴い,ブートディスクにおいて 3割以上(13[MB/sec])ものパフォーマンス アップが図られました

 これが原因か,マシンの起動等が心なしか早くなり,キビキビ動くように なった気がします

■サーバソフトの準備
■ファイルサーバとして使うためのソフト[samba,Pro-ftpd]
 ファイルサーバとして利用する場合,当然ながらクライアントマシンに対して ファイル共有サービスを行うためのサーバソフトが動いている必要があります.UNIX 同士 であれば NFS (Network File System) が利用でき,これは一般的な Linux ディストリビューションであれば,最初から入っているでしょう./etc/exports ファイルを設定することにより,他のマシンからネットワーク経由でマウント可能 になり,ローカルディスクのように利用することが可能になります.

 しかし,私の環境の場合,殆どのクライアントマシンは Windows が動いており, NFS が利用できません(サービスソフトを導入することにより Windows マシンから NFS で利用する方法もありますが,ここでは説明は割愛します).Mac をクライアント として利用する場合も同様です.また,私の場合インターネット経由で外部から 参照する場合は,ftpを利用します(WebDavを使用する手もありますが,私は殆ど 利用していません).

 なお,私の環境では現在 Mac は使用していませんので,Linux ディスクを Mac からネットワーク経由で利用可能にするソフトである netatalk の説明は割愛します.

○sambaのインストール/アップデート
 Linux を Windows マシンに対してファイルサーバとして稼働させるためには sambaを利用するのが最も一般的でしょう. Vine の CD-ROM にも samba パッケージが含まれており,インストール時に選択する ことにより導入されます.しかし,多くの人が感じられていることだとは思いますが, Vine に含まれるパッケージはかなり古いものが多く,何かと問題が出る場合があり ます.samba を例に挙げますと,Vine に含まれている samba のバージョンは 2.0.10_ja_1.2-0vl3.26 となっています.2004年7月現在,sambaの最新版は3.0.5pre1と なっており,2.x ベース日本語版の最新は 2.2.9です.単にバージョンが新しくなって いるだけであり,拡張/バグフィックスされている内容が普段自分の利用に関係ない部分 であれば問題ないのですが,2.0.10では 2GB を超えるファイルを扱うことができません. そしてこの問題が解決し,また,不具合が修正されたのは 2.2.7a です.この問題の影響 は非常に大きいと思われますので,アップデートしておきましょう.2.2.9であれば, 例えば こちら からダウンロードできます.Vine 2.6 にRPM で導入したい場合は, samba-2.2.8a.ja-1.0vl1.i386.rpmが現時点で最新のようです.

※Vine 等にソースからインストールする場合,インストール先が rpm パッケージと 異なります.合わせたい場合は configure 実行後,Makefile の修正が必要.また, コンフリクトを避けるため,『rpm -qa |grep samba』や 『rpm -qa|grep smb』を 実行して現在インストールされている samba 関連のパッケージを確認し, 『rpm -e [パッケージ名]』で削除しておく方が良いでしょう.削除前に設定ファイルの バックアップをお忘れ無く.

 ソースから何も修正せずにインストールした場合,一連のファイルは /usr/local/samba 以下にインストールされます.Linux 初心者の場合は,若干バージョンが古くても,rpm パッケージでインストールした方が良いでしょう.以下,オリジナルを尊重して Makefile を変更せずに Vine2.6r4 相当へインストールした際のメモです.

1./usr/local/samba/lib/ の下に設定ファイル(smb.conf等)を置く
2.packaging/SambaJP/smb.init.rh6 を /etc/rc.d/init.d/smb にコピー
3./etc/rc.d/init.d/smbの修正
 1)私の場合は設定ファイルを/usr/local/samba/lib/の下に置いているので
   # Check that smb.conf exists.
   [ -f /etc/smb.conf ] || exit 0
  を
   # Check that smb.conf exists.
   [ -f /usr/local/samba/lib//smb.conf ] || exit 0
  へ修正
 2)smbd,nmbdをフルパスで書き換え
   daemon smbd $SMBDOPTIONS
   daemon nmbd $NMBDOPTIONS
  を
   daemon /usr/local/samba/smbd $SMBDOPTIONS
   daemon /usr/local/samba/nmbd $NMBDOPTIONS
  へ修正
4.自動起動するように設定(例えばntsysvでsmbを選択)
5.smbのログ用ディレクトリを作成
  mkdir /var/log/samba

 『/etc/rc.d/init.d/smb start』で実行後,/usr/local/samba/var や上記の
ログディレクトリの下のファイルに何かエラーが出てないかチェック.

 そしてこの場合には /usr/local/samba/lib/smb.conf に設定ファイルを置いている わけですが,私の場合は以下のように設定しています.要点を掻い摘んで書きますと,

  • ワークグループ名は『HOME』.windowsパスワードは平文で流し,日本語はEUCで ディスク上に書く
  • homeはログインユーザーのホームディレクトリをマウント出来るようにする
  • /export/hd? に各ディスクをマウントしており,そこは誰でも読み書き出来る 設定で"terminator[番号]"という名前で公開
  • /tmpも誰でも読み書き出来るように公開

 です.ユーザーが限られているため,使い勝手を考えてセキュリティ的にユルユルに しています.企業内でバチッと守らないといけないファイルがある場合は, 日本sambaユーザー会が公開している ドキュメントを参考に,設定をチューニングして下さい

[global]
        coding system = euc
        client code page = 932
        workgroup = HOME
        netbios name = terminator
        server string = Terminator linux box samba
        encrypt passwords = No
        map to guest = Bad User
        socket options = TCP_NODELAY SO_RCVBUF=8192 SO_SNDBUF=8192
        dns proxy = No
        os level = 1
        log file = /var/log/samba/log.%m
[homes]
        comment = %U's Home directory
        read only = No
        browseable = Yes

[terminator00]
        comment = Disk00
        path = /export/hd0/
        read only = No
        guest ok = Yes
        browseable = Yes
<中略>
[tmp]
        comment = tmp space
        path = /tmp/
        read only = No
        guest ok = Yes
        browseable = Yes

 注意点としては,Windowsクライアントはpasswd無しでアクセスするように なっていることです.Windows98 以降はパスワードを暗号化して送るのが標準 ですが,色々と事情がありまして,このように設定しています.なお,この場合, Win98 以降のマシンを使用する場合,クライアントマシン側で平文パスワードを 使用するように設定しなければなりません.sambaのソース内のdocs/Registry/ 以下にレジストリキーがありますので,ftp等でwindowsマシンにファイルを GETし,例えば Windows 2000の場合は『Win2000_PlainPassword.reg』をマウスの 右クリックで『(レジストリに)結合』する必要があります.

○Pro-ftpdのアップデート
 Vine に最初から入っている ftp デーモン(Pro-ftpd)も 2GB の壁があります. apt-get コマンドを使用し,最新版にアップデートしておきましょう.7月現在の Vine 用最新パッケージは,proftpd-1.2.10-0vl0.1 です.

 なお,Pro-ftpd の新しい版では,NLST コマンドがサポートされません.ftp クライアントソフトがファイル一覧時にこのコマンドを使用している場合 (例:windows 用 ffftp)は,LIST コマンドを使用するように設定して下さい. ffftpの場合,『ホストの設定->高度->"LISTコマンドでファイル一覧を取得"』 をチェックすればOKです.

■本運用開始
■本運用開始して
 当初は 120GB*2+250GB*1 の合計 490GB で運用していた TU1号機ですが, 今回のディスク換装に伴い,ディスク搭載量は 250GB*3 の合計 750GB に なりました.そのため,当初は

ファイルシステム    1k-ブロック   使用中      空き 使用% マウント場所
/dev/hda3            117591760  89300120  22318272  81% /
/dev/hda1                62193     20006     38976  34% /boot
/dev/hdb1            118169876  98080708  14086484  88% /export/hd1
/dev/hdc1            241263968 165830684  63177700  73% /export/hd2
/dev/sda1            241263968     32828 228975556   1% /mnt/firewirehdd

 のような状態でり,使用率が 80% を超えてヒヤヒヤしていたパーティション があったわけですが,それがかなり解決されました.しかし,容量にかなり余裕 が出来たことを良いことに,連続ドラマを高画質で頻繁に録画するようになった 結果,1週間半後には以下のようになりました.

ファイルシステム    1k-ブロック   使用中      空き 使用% マウント場所
/dev/hda3            239708324 113401488 114130372  50% /
/dev/hda1               132207     19995    105386  16% /boot
/dev/hdb1            241263968  98704968 130303416  44% /export/hd1
/dev/hdc1            241263968 165830692  63177692  73% /export/hd2

 むむむ.『空き容量一定の法則』は今回も近いうちに再現されるのでしょうか…

 また,TU1号機はrrdtool+HotSaNICを使用して 各種ステータスを監視しているわけですが,こちらの設定をディスクの交換に 伴って変更せなあかんのかなと,思っていたのですが,何もしなくてもOKでした.


図:rrdtools+HotSaNIC の表示

 このグラフを見て頂けると,上記の『急に空き容量が…』の話が納得いくと思います. このペースで使い続けると,1年はおろか数ヶ月くらしか持ちそうにありません.TV録画 のビットレートを下げるか,録画後別形式に再エンコせねば…

■まとめ
 ディスクが溢れたためといった切実な動機で行ったわけではありませんでしたが, 今回のディスク入れ替えは WD2500JB の新しいリビジョンが出回る時期と重なった こともあり,非常に良いタイミングであったと言えます.そして入れ替え前は,常に 『あ,このデータ置けるかな』や,『このデータをテープに追い出して空き容量を稼 がないと』と,ドキドキしながら使っていた部分がありましたが,この部分に関して も劇的に改善されました.とは言え,前述のように,そう遠くない将来に再び 『ディスクの空き容量』の心配をしなければならない状況になりそうですが, 今しばらくは何も考えずに広大な空間を堪能でき,晴れ渡った気分でディスクを 贅沢に使えそうです.

 samba を使用した Windows とのファイル共有も絶好調であり,HDBench 3.30 を 使用してベンチを計測したところ,100Mbps 全二重でのリンク時には, Read,Write,Copy いずれも約 8M〜10M[Byte/sec] の速度が出て います.この速度は現在の最新のディスクの速度と比較すると見劣りがする物ですが, 一昔前のディスクと比較すると遜色が無く,大きなデータを頻繁に読み書きしたり するとき以外は,ディスクをネットワーク越しに使用していることを忘れるほど快適 です.

 さて,こうなりますと色々と欲が出てきます.例えばこれまではファイルサーバ に置くことが躊躇された大容量のデータも,ファイルサーバに置くようにしたいと 思い始めました.具体的には,ローカルで作業をする際に,『まずはファイルを コピーして,ワーク用のものをローカル上に書き出しながら処理をして,最終的な ものをサーバ上にコピーして…』と,チマチマとやっていたわけですが,一通りの ものをサーバ上に置いたままで行おうということです.これを実現するためには, より一層のネットワーク転送速度の向上を図り,ローカルで作業をしているのと殆ど 変らないくらいの速度が欲しくなってきます.即ち,ネットワークを 100Mbps から 1Gbps へ高速化することを考え始めました

 次にファイルサーバ上に大容量のディスクが取り付けられたということは, ちょっとした事故で失われるデータ量も半端では無くなったということになります. これまでは,こちらのページにまとめたように, USB 外付けの 250GB ディスク1本で重要な部分のみをバックアップしていた わけですが,今回の容量の増加によって,この容量では絶対的に足りなくなって しまいました.また,USB1.1の 転送速度(実測 1MByte/sec)では,これだけの大容量データをバックアップする 際には,途方に暮れてしまう程の時間を費やしてしまう可能性があります. バックアップ容量およびスピードに関し,何らかの 抜本的な改革が必要です

 これらのことを考えるにつけ,ディスクの増設(ディスク容量の増加)は新たな ニーズを喚起し,スパイラル的により抜本的な増強を欲する結果になるのでした…


『Asus Terminator 活用メモ』 へ戻る