修理後の復活と Vcore 1.5V AthlonXPの利用

■修理の完了と再構築
■思ったよりも早く戻ってきたK7DDR
 詳細については『そして故障…【AthlonXPの温度とAsus PC Probeの嘘】』で書きましたが, CPU温度計測実験中にオーバーヒートを原因として CPU を巻き込んでの M/B という惨事に見舞われ,私の K7DDR は長らく海外へ修理の旅路に付いていました. 販売店の話では,『代理店が言うには修理に3週間くらいかかる』 とのことでしたが, 実際に戻ってきたのは 4/17.3/30に発送しましたので,ほぼ見積もり通り.また, フロントUSBケーブルが断線していたり(いつの間にかコネクタ根本で折れていた), 電源スイッチのケーブルも断線させてしまっていたりしたのですが,全て無料で修理 して頂けました.通販で購入したということもあり,意思の疎通に一抹の不安を感じ ていたのですが,杞憂に終わりました.パルテックダイレクトさん,ありがとう

 しかし,代理店経由で聞いて欲しいとお願いしていた『Asus Probe問題』は,結局 Asus から回答を得られませんでした.Asusにダイレクトに問い合わせしようにも, 窓口が不明なので,現在うやむやになっています.

■K7DDR 環境再構築の方針
 故障後,K7DDR に入っていたパーツ類は Celeron1.4GHz ベースの Terminator TU(2号機)に移していたのですが,修理から戻ってきたために再び移植し直しとい うのも面白みに欠けます.TU 2号機の環境もある程度整備済みの状態になっ ていますので,再び白紙に戻してしまうのも気分的に嫌なものがあります.そこで, HDD,DVD Multi Drive,拡張カード等を新調し,ついでに CPU も新しくして 組み直すことにしました.

 CPU は今巷で評判の『Vcore 1.5V タイプの AthlonXP』を選択し, DVD Multi Drive はカートリッジ付きの DVD-RAM メディアが利用可能な Panasonic 製 LF-D521JD.HDD は MAXTOR 製で定番の 5400rpm 流体軸受け 120GB IDE HDD の MXT4R120L0 を調達 しました.

■調達したパーツ類
■Vcore 1.5V タイプの AthlonXP 1800+
 ご存じの通り,Thoroughbread コアの AthlonXP は,プロセスルールを0.13[μm] に変更し,低電圧化も相まって,発熱が Palomino コアのものよりも低いと言われ ています.例えば Palomino コアの 1700+,1800+ は共にコア電圧が 1.75[V] であ り,消費電力は 57.4[W],59.2[W]であるのに対し,コア電圧 1.5[V]の同ナンバーの Thoroughbread コアの AthlonXP では,それぞれ 44.9[W],46.3[W]です.Mobile AthlonXP ほど低消費電力ではありません(Mobile AthlonXP 1800+ の場合,Vcore 1.4[V]で 35[W])が,デスクトップPC向けとして売られており,入手性が良く,かつ, 使用する際に下駄が不要という点を考慮すると, Terminator で利用するには打って付けの CPU と言えそうです.

 以前,Thoroughbread コア CPU が店頭に並び始めた一時期,AthlonXP 1700+ において,VCore 1.5[V] の製品(A-Stepping:俗称 偽皿)が出回りました. そしてその後 1700+ は Vcore 1.6[V] の製品(B-Stepping)に置き換わってしまった のですが,PCメーカーからのリクエストにより,最近再び1.5[V] のもの(これも B-Stepping)が製品ラインナップに加わることになり,店頭にも潤沢に出回り始めた という経緯のようです.

 この 1.5[V] のタイプは『苺皿』とも呼ばれ,巷では大変人気を博しています. これは単に低電圧化による消費電力の低減だけが魅力ではなく,私があちこちで 見聞きした情報によると,

  • 低消費電力
  • 低電圧耐性
  • オーバークロック耐性
 が何れも抜群とのことです.特にオーバークロック耐性は抜群のものがあり, コア電圧を上げなくても,場合によっては 1700+ が 2400+ 相当(実クロック 2GHz)で動作する場合があり,コア電圧を上げれば,さらに上も狙えるようです.

 とは言え,私の場合は安定稼働が目標ですので,基本的に当面は定格で 動かすことにし,当面は低消費電力というメリットのみ享受しようと考えています.

AthlonXP 1800+ (Vcore: 1.5[V]).PCワンズ 店頭で 7500円程で購入.

今のところ店頭で入手可能な Vcore 1.5[V]タイプの AthlonXP では最も 高クロックのタイプ.オーバークロック前提であれば,1700+ の方がお勧め かも.

AXDA1800DLT3C."DLT3C" の "L" 部分が Vcore 1.5[V] を指す.

AthlonXP 1800+ には,AXDA1800DUT3C という型番の, Vcore 1.6[V] タイプも 併売されているので注意.

■LF-D521JD,MXT4R120L0
 DVD Multi ドライブとは,DVD フォーラムで規格として策定されている DVD メディアを全て扱うことの可能なドライブに対して与えられる名称です. また,DVD-R, DVD-RW, DVD-ROM, DVD-RAM が使用できるのと共に,CD-R, CD-RW, CD-ROM等も利用できるのが普通です.なお,DVD+R や DVD+RW は『DVD』 という名称を冠していますが,DVD フォーラムの正式規格ではありませんので, Multi ドライブでは(一般に)使用できません.

 また,DVD ドライブメーカーに おいて,DVD-RAM は政治的,コスト的に微妙なポジションにあるため, Multi から DVD-RAM サポートのみを省き, DVD-R/RW/CD-R/RW のみに対応した ドライブも広く販売されています.これらは一般に,DVD-R/RW ドライブ と呼ばれます.

 Panasonic 製 LF-D521JD はと言いますと,DVD Multi ドライブであり,一通り の DVD 系メディアおよび CD 系メディアが扱えます.また,Panasonic らしく, カートリッジ付きの DVD-RAM が扱える,現在唯一の DVD Multi ドライブです (DVD Multi ドライブであっても,カートリッジレスでなければ扱えないドライブ が多い.噂では,政治的な配慮により,わざとそのようにしている場合もある のだとか).

 私が DVD-RAM サポートに拘っているのは,日常的に家電製品の DVD-R/RAM レコーダーを使用しており,エアチェックしたものを,データとして PC 上で 便利に扱えるからです.また,カートリッジ付き DVD-RAM が利用可能で あることに拘っているのは,手持ちのメディアが沢山あるからです.

 このような事情が無く,DVD-RAM は不要だということであれば,例えば Pioneer の4倍速ドライブや,2万円をかなり下回る価格で売られている,東芝製 SD-R5002 等の DVD-R/RW ドライブを選択するのも良いのではないかと 思います.また,少し待てるのであれば,DVD-R が4倍速,DVD-RWが2倍速の LG日立製 DVD Multi ドライブの販売開始を待つというのも良いかと思います.

LF-D521JD は箱売りされているものもありますが,バルク品を購入.27千円也.
バルク品ということもあり,バンドルソフトは B's recorder 5 BASIC (B's recorder,B's Clip, B's DVD)および DVD-RAM のドライバのみ.DVD-R/RAM レコーダと連携させるのであれば,MovieAlbum もバンドルされている箱売りがお勧めです
『高品質を求めるため,ケースは黒に』といったことが説明されているドライブが多いようです
DVD Multi のロゴ.BOX版とは少し印刷が異なります.OEM版でしょうか…
2003年3月の日本製.
トレーはこのように引き出されます.DVD-RAM のカートリッジ付きのタイプにも対応

# Terminator が3台並ぶと壮観ですなぁ…

 Asus の FAQ にもあるように,Terminator は BigDrive に対応していません. そのため,BIOS による IDE ディスクの認識は 137GB までとなります(OS を選べば, 137GBオーバーを利用できないこともありません).

 現行で販売されている製品でこの制限に引っかからない最大の容量は 120GB です.私は,(経験的に)高信頼性であると思われる,MAXTOR 製流体軸受けタイプ の 5400rpm ディスクを使用することにしました. (パフォーマンスを取る場合は 7200rpm にすると良いと思いますが,その分発熱 が増します)

MXT 4R120L0
以前購入した4R120L0では,+5[V] が 795[mA], +12V が 896[mA] でしたが, それぞれ 590[mA], 590[mA] といった具合に消費電力が低減されています.型番 は同じなのですが,出荷時期によってこれほどまでに消費電力が違うとは…

■USB 2.0+IEEE1394 インターフェイス
 私は K7DDR に IEEE1394 接続の TVキャプチャBOX (I/O Data GV-1394TV)を接続し,高品質で TV およびビデオキャプチャを 行うことを考えています.そのためには,IEEE1394 インターフェイスを追加 する必要があるわけですが, 玄人志向 USB2.0+1394PCI を使用することにしました.このカードは USB 2.0 と IEEE1394 のコンボ カードですが,K7DDR にはオンボードで USB2.0 が付いています.そのため, 機能的には重複する部分もありますが,USB Hub を追加してポート数を増やす のと比較した場合,本カードを利用した方がコスト的なメリットがあります.

 なお,このカードには ver1.0 および ver2.0 という2種類が存在し,その他, USB2.0+1394-FBPCI というフロントベイに端子を出力するタイプも存在します. ベイに余裕があるようであれば,FBPCIを選択するのも良いかもしれません.

ご存じ玄人志向のパッケージ
U2.0+1394PCI.店頭価格で5千円前後.USB2.0+1394-FBPCI も似たような 製品名&パッケージングですので間違わないように注意(私は間違えて 購入したことがあります…).
カード全景.極めてシンプルな作り
ブラケット側に USB2.0 が2ポート,IEEE1394 の 6pin タイプが2ポート
ケース内接続用に USB2.0,IEEE1394 がそれぞれ1ポート.
このように,基盤上側にカードののバージョンがシルク印刷されています.これは Ver2.0のタイプ

ちなみにver1.0のタイプですと,左の写真のように,USB および IEEE1394 の 端子に給電するための FDD 用電源コネクタタイプの端子が付いています.Ver2.0 は PCI スロットから電力を供給しているのかな…

(製品に同梱されているマニュアル は Ver1.0 も Ver2.0 も同じで,『電力供給用にこの端子を電源に接続してね』と 書いてある)

USB2.0 は,定番の NEC 製チップを使用
写真は少し切れてしまいましたが,IEEE1394 は VIA 製チップを使用

■動作チェック
■CPU温度
 まず起動チェックですが,BIOS 画面で CPU コア電圧として,1.5[V] が供給されているのが確認できました.

 CPUクーラーは,CoolerMaster DRACO-XP を使用しました.K7DDRの ソケット周りの空間的には 8cm FAN を使用したタイプも辛うじて入り そうですが,高さも考慮すると,7cm ファンのタイプが良いように思います. 今回は手持ちのものを使い回す感じで使用しておりますが,最近は さらに静音&冷却能力の高いCPUクーラーもあると思います.

 さて,組み上げて OS をインストールして…と,いう所までは問題なく 行けると思いますが,これだけで安定稼働すると認識してはいけません. なぜなら,長時間過負荷に陥った際の CPU や M/B(電源) 温度の推移に関しても十分注意しなければならないからです. 詳しくは『そして故障…【AthlonXPの温度とAsus PC Probeの嘘】』 でも書きましたが,これらのことがクリアできてはじめて,安定 して使える構成と言えるでしょう.

 そこで前回同様,午後のこーだを使用した耐久試験(10分間)を行うことと して,各温度は MBM を使用して監視することにしました.結果は以下の通りです. なお,室温は前回の実験のときと比較して若干上昇しており,23度の状態で行い ました.

※Sensor1:Asus PC Probe の報告する CPU 温度と同値.
 Sensor2:同 M/B(電源)温度
 Sensor4:AthlonXP内蔵のサーマルダイオードから取得した CPU コア温度

センサー名 実験開始前[℃] 1分後[℃] 3分後[℃] 5分後[℃] 10分後[℃] ベンチ終了+30秒[℃]
Sensor1 43 43 44 45 45 45
Sensor2 55 55 55 55 55 55
Sensor4 66 72 72 72 72 68

 前回の実験と比較してみると,AthlonXP 1800+(Vcore 1.5[V]) は Mobile AthlonXP 1800+ と比較すると発熱するけれども,Palomino コアの AthlonXP 1900+ と比べ,大幅に発熱量が少ないと言えます.また, 前回は『下駄により,Asus PC Probe の報告する CPU 温度は低めに なるのではないか』という仮説が検証できませんでしたが,今回も 明確な差は出ませんでした(下駄以外の環境を統制して実験し,サン プル数を増やせば検証できるかもしれませんが…そこまで のガッツはありません…).

 また,今回の構成では M/B 温度が10度ほど上昇していますが,これは Panasonic 製 DVD Multi ドライブの消費電力(それも非利用時)が 高いことが原因の可能性があります.ちなみに,ケースファンを Q-FAN コントロールで使用すると,M/B 温度は 60度ほどで安定します.この温度 は,Q-FAN が回転数を若干上げるか上げないかのギリギリの所のようで,少し負荷を かけると,回転数が上がっていくのが耳で聞いていても分かります.

 最後にこの環境での安定性に関する考察ですが,コア温度が最高でも 72度までの 上昇に止まっていることから,安心できると言えそうです.C.O.P.が 発動する温度を 90度とすると,現在 18度の余裕がありますので, 室温41度までは大丈夫そうです.

■パフォーマンス
 一通りのデータは改めて別ページにまとめる予定ですが, HDBench 3.22でベンチマークを 行った所,興味深いデータが出ましたので,ここに掻い摘んで書いておく ことにします.

項目 内容
OS Windows 2000(SP3)
VGA オンボード(SiS 740)
解像度等 1600x1200 32bit color 75Hz

 という同一の環境で行い,CPU のみを Mobile AthlonXP 1800+, AthlonXP 1800+(Vcore 1.5V) という2条件でベンチを走らせたところ, 以下のようになりました.なお,ディスクに関しては条件が異なるため, 割愛しています.

CPU Integer Float MemoryR MemoryW MemoryRW DirectDraw Rectangle Text Ellipse BitBlt
Mobile AthlonXP 1800+ 67882 79753 17349 19865 23841 29 16573 16200 7834 21
AthlonXP 1800+
(Vcore 1.5V)
65558 79740 17498 19799 24139 30 16721 16336 7900 21

 ほぼ全てのデータがほぼ同じ値(異なるとしても誤差の範囲内)になって おりますが,何故か Integer の値のみ 5% ほど Mobile AthlonXP の方が高い レートを出しています.この傾向は何回データを取り直しても同じでした.

 CPU 自身の動作クロックは同じですので,コア自身の性能が若干異なる といったことが言えると思います.

■まとめと今後の課題
 とりあえず安定して動く環境が復活し,ホッとしています.実のところ ソフト的な環境は未だ復活できていない部分もあるのですが,ボチボチ 整備して行くつもりでいます.

 懸念事項として残っているのは,M/B 温度がやや高いことでしょうか. できれば 50度前後に押さえたいと考えおり,今後若干のトライを行う予定で います.また,折角オーバークロック耐性の高い CPU を使用しているので すから,どの程度まで K7DDR で安定稼働できるかも試してみたいところです. おそらく,CPU の耐性以前の段階で,メモリが足を引っ張りそうですが…


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