静音化とファンレスの検討4 (吸音材,ファンサイレンサー編)

■小物を使ったの静音化のテクニック
■吸音材,制振材について
 音は基本的に空気の振動のことですが,PC の騒音を低減するためには2つのアプ ローチがあります.一つはファンなどの発する風切り音をはじめとする騒音を 吸収し,外部に逃さないようにする方法.もう一つはドライブ等が発する振動 を押さえ,ケース自身が騒音を発することを押さえる方法です.

 静音パーツ売り場には,『吸音』『制振』といった文句で 数多くのパーツが売られていますが,これらはそれぞれ性格が異なります.

 『吸音材』は文字通り発生した音を吸収し,別のエネルギーに変換 (大抵は熱に変換します)するための素材です.安価なものはウレタン材を使用 しており,高価なものはダイポルギー等の特殊素材を使用しています.

 なお,ダイポルギーとは,CCI社が 開発した素材であり,吸音フォームの性能は, ウレタンフォームと比較して吸音 性能が2.8倍であると言われています.詳しくはメーカーサイトの説明を読んで 頂くとして,最近 PC 用として売られている吸音製品は大抵ダイポルギーを使用 しています.

 『制振材』はドライブやファンが発する振動を制し,所謂ケースの ビビリを防ぐための素材です.鉛などの金属製のものの他,樹脂系の素材を使用 したものがあります.

 『CD-ROM ドライブを使うと振動してとうるさい』のような場合は,制振材を使う と効果があることが容易に想像できると思います.この他にも,ディスクやファンの 振動がケースを振動させ,あたかもケース自身が太鼓のような状態になり,間接的に 騒音を発する状況になっているときがあります.このような場合にも,ケースに 制振材を使用すると騒音を低減することが可能です.

 ケースを手で押さえ付けてみた 際に騒音が減る場合は,制振材を使用することによる騒音の低減が期待できます

■準備した小物
 前回防音シート電源静音フードに関して少し触れました.今回は,それらのパーツを 実際に入手できましたので,その効果の程について検証してみようと思います.

 今回調達したパーツは以下の通り.

写真名称備考
左からエーモン工業株式会社AODEA デッドニング

  防音シート
  制振シート
  吸音シート
(クリックで画像表示)

カー用品店やホームセンターで売られている一般的なもの.それぞれ2780円, 2980円,1480円と安価であり,本来車に貼り付ける用途のため,サイズも 50cm*45〜50cm と大きいサイズ.使用時に任意のサイズにカットして使用する.
左からダイポルギー制振シート,吸音フィルム CCI社が開発した吸音素材,ダイポルギー を使用した制振シート,吸音シート.それぞれ980円,1280円.大きさはどちらも 約15cm*20cm.厚さはそれぞれ1mm,0.2mm.
ダイポルギー吸音キット ダイポルギーを使用した吸音シートおよび発泡体(ウレタンフォーム),両面テープのセット.2580円
ダイポルギー ファンサイレンサー 本来はATX電源等のファンに外付けで取り付けるためのサイレンサー.8cmファン 用.3280円で購入
PF-Silencer 2 本来はATX電源に外付けで取り付けるためのサイレンサー.ATX電源全体を 覆うように取り付ける.4180円で購入
■調査
 まず,Terminator の騒音の原因を探ります.私の場合は CPU が ファンレス構成のため,騒音源はディスク,ケースファン,そして(使用時は) CD/DVD-ROM ドライブになります.

 まず振動の影響を調べるために,原始的な方法ですが,ケースを手で 押さえ込んでみました.結果,騒音レベルは変わらず,ケースが振動する ことによる騒音の増大は(殆ど)発生していないことが分かりました. そのため,今回は制振材の使用は行いませんでした.
 なお,CD/DVD-ROMドライブ類を頻繁に使用し,かつ,振動がひどい場合 はこの要因に対しても何らかの対策が必要だと思います.

 次に,騒音源の特定ですが,ディスクの動作音,そしてケースファンに よるものであることは明白です.ただし,SilentDrive を利用している ディスクに関しては,対策が不要なほどの静粛性が確保されています. また,ベイに直接 接続しているディスクに関しても,動作音はそれほど大きくなく,また, 普段はスピンダウンしていますので,それほど大きな問題にはなりません. そのため,ディスクに対しては追加で騒音対策を行わないことにしました.

 残るはケースファンですが,この問題はやや複雑です.ケースファンが 騒音を発する理由として考えられる原因はいくつかありますが,大きく分 けて,次の3つであると考えられるでしょう.

    (1) 空気の流れのスムーズでない部分で風切り音が発生
    (2) ケースへの取り付け部分で振動が発生
    (3) ファンのブレード自身が風切り音を発生
 1番目の要因について詳しく説明すると,例えばファンガードやファンの 取り付け位置付近に存在する障害物(ヒートシンクや拡張カード等)が原因 と考えられます.2番目の要因は,所謂ファンの取り付けの甘さなどから来る, ビビリやガタツキです.3番目はユーザー側からは如何ともしがたい問題と も言えますが,ファンのブレード形状に問題があるために発生してしまう, 風切り音です.

 結論を先に書きますと,3番目の問題が一番大きく,1番目,2番目の問題 は殆ど無視できる程小さなものであると言えそうです.ファンを単体で回した際に, 取り付け時とほぼ同じくらいの騒音が発生しましたから….

■騒音対策の方針
 このような調査結果から,次のような対策を行うことにしました.

    (1) ケース内に吸音シートを貼り付け,ケースファンの発する音を吸収
    (2) ケースファン外側に吸音パーツを取り付ける
 つまり,ファン自身の発する音は如何ともしがたいので,外に漏れる 音を少なくしようということです.
■実践
■吸音フィルムを使用する
 Terminatorのケース内はあまりスペース的な余裕がありませんので,今回は できるだけ薄くて効果の高そうなシートを使用することにします.今回 用意した中では,ダイポルギー吸音フィルムが 0.2mm と最も薄 く,そこそこ効果も期待できそうです.もう少しスペース的に余裕があれば, ダイポルギー吸音キットを使用する方が良いのですが,ケース内の 隙間の関係で,貼り付け可能なサイズが制限されてしまいます.少々強引に 貼り付けてみましたが,ケースが膨らんでしまったため,運用を断念しました.

吸音フィルムの取り付けは至って簡単です.裏側のシールを露出させ…
このように,ケース内側に貼り付けるだけです.当然ながらM/B側ではなく, ケース正面向かって左側の裏に貼り付けます.こちら側に貼り付けることにより, ケース内空間の騒音が吸音されることでしょう.

サイズ的には売られているものを特にカットせずとも良く,そのままの状態 で貼れました.できるだけ騒音源(この場合はケースファン)の近くを囲むよ うな感じに貼るのが良いでしょう.

■電源ファン用サイレンサーを使用する
 今回はダイポルギー ファンサイレンサーPF-Silencer 2 という2種類を用意しました.これらは本来電源ファンのサイレンサー として使用するものですが,動作原理は共に同じです.ファンが排気する空気 を一度板にぶつけ,板の内側に貼り付けてある吸音素材で吸音し,かつ風速を落と した後に別方向に排気するというものです.例えるならば,単車のマフラー に近い構造とも言えるでしょう.

 Terminatorではありませんが,別のデスクトップマシンにこれを取り付けた ところ,絶大な効果を発揮しました.そのため,かなり期待持ちつつトライして みました.

 ではどのように取り付けるのか…と,いう話になりますが,基本的にATX電 源に取り付けるような作りになってるため,ネジ穴の位置がケースファンに取 り付けるに際して若干問題があります.特にダイポルギーファンサイレンサー の方は,8cmファン用のため,9cmケースファンに取り付けるには小さすぎます. 吸音材を削ったりしながら試したのですが,ファンのかなりの排気面積を塞い でしまうことになってしまうため,使用を断念しました.

ファンガードを取り付けていましたが…
この際,取り外すことにしました.
『PF-Silencer 2』を分解し,まずこのパーツを取り付けます.
左上1カ所ネジ止めするとほぼ固定されますが,若干安定が悪いので, テープなどで補強しておいた方が良いでしょう.
蓋をかぶせて完成です.

かなり後ろにせり出して不格好になります.ある意味,奥行きが短いという Terminator のメリットが無くなってしまうとも言えます.

 注意事項としては,この手のパーツは排気プレッシャーとしても作用します ので,排気圧の低いファンですと,充分に排気されなくなります. すると当然ケース内温度の上昇を招きますので,使用の際には注意が 必要です.

■結果と対策
■結果
 今回いくつかの小物を使用し,静音対策を行ったわけですが,次のよ うな効果および影響が現れました.

吸音フィルムの効果

 殆ど効果らしきものが感じられません.原因としては,薄手の シートを使用したため,充分に吸音できていないということが考えられ ます.また,ダイポルギーは効果を発揮する音の周波数帯域が限られて いますので,現在吸音して欲しい騒音の帯域が外れているということか もしれません.

電源ファン用サイレンサーの効果

 Terminatorでの使用に際しては,殆ど効果がありませんでした.

 この手のパーツは電源ファンの風切り音そのものよりも,排気の際に 巻き起こる風切り音に対して効果があるものです.そのため,今回のよう な環境では,あまり効果が認められなかったのかもしれません.また, ケースファンの発する風切り音の質が比較的低音域ですので,吸音材で 吸収しにくい音質であったのかもしれません.

 その他,取り付けた副作用として,風量の低下によるCPUおよび電源温度 の上昇が若干認められました.そのため,風量を稼ぐために,吸気口を増 やすことにしました.

ケースを開けた状態でフロント部分を見るとこのようになっています. ここには,フロントアクセス可能なUSB,オーディオ端子が出ています.
上部に取り付けてあるネジを1本外すと…
このブロックが外れます.
ケーブル類をコネクタから抜きます.
ケースを取り付けるとこのような感じ.USBの部分にすっぽりと穴が 開口しているのが分かると思います.

 注意点としては,このような場所に吸気口を開けると別の部分に空気が 流れるようになり,電源部に空気が通りにくくなる可能性があることです. これを防ぐ一つの手としては,シャーシ側の新設した開口部を紙等で塞いだ り(この場合でもケース外からの吸気口は増えるので,トータルでは流量が 増える),ダクトを作成して電源部に風が流れるようにすること等が考えら れます.

 実際に開口部を新設した後温度を測ったところ,CPUおよびM/B温度は, 電源ファン用サイレンサーを取り付ける前のレベルにまで低下しました.

■対策:さらにあがいてみる
 色々と小物を使用して対策を行いましたが,正直,効果は殆ど体感出来 ませんでした.これではあまりに悔しいので,ケースファンをケース外付け にすることを試してみました.

ケースファンをケース外側に取り付け.ファンガードは内側,外側共に 外し,障害物による風切り音発生を押さえる.当然ながら,シャーシの ファンガードは切り取っておく.
電源ケーブル,ファン回転数コントロール用半固定抵抗への配線の取り回し.

ケースを開けなくてもファンの回転数をコントロール出来るようになり,便利.

ファンを外付けにしたため,電源ファン用サイレンサーがネジ止めできなくなります. そのため,ビニールテープで固定しました.
蓋を閉じるとこんな感じ.
コネクタ類も辛うじて塞ぎません

 結果ですが,心配していたケース内の温度の上昇こそありませんでしたが, 本題である騒音はあまり変わりませんでした.ファンの回転数を簡単に調整 出来るようになりましたので,良しとしますか…

■まとめ
■まとめと最終形態
 最終的に,あまり効果が認められなかった電源ファンサイレンサーは 取り外し,ケースファン外付けで運用することにしました.ただし,PCラック に設置した際に,ファン排気が直接PCラック背面の鉄板に当たるため,この 部分で騒音が発生してしまう結果に.この問題を解決するために,AODEA 吸音 シートを鉄板の排気が当たる部分に貼り付けました.結果,気休め程度には 騒音が低減されたような感じがします(かなり主観的な観測かつ効果はそれほど 大きくない).

 まとめとしては,この手のパーツは思ったよりも効果が無いため, 過度な期待は抱かない方が良いといった感じでしょうか.また,電源 ファンサイレンサーに関しては,温度上昇を招く可能性もあるので,その利用 には注意が必要です.

電源ファンサイレンサーの名誉のために付記して おきますと,使用環境によっては絶大な効果を発揮します. 実際,私の手持ちの Eden(C3 533MHz オンボードM/B)+Silencer 235W電源の環境に取り付けた際には,Terminator 以下の騒音レベルに なりました.


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