■テープメディアを使用したバックアップの悩み | ||||||||||||||||||||
バックアップを考える
その1,その2
のページでは,UNIX でバックアップを取る際に一般的な,テープドライブを
使用する方法に関して解説しました.しかし,既に多くの方が感じられている
通り,労力の点から考えると,テープローダーを使用したシステムを使用し
ない限り,大容量ディスクをフルバックアップすることは,非現実的です.
かと言って,テープローダーを導入しようと考えても,装置自体が個人レベルで
は手が出ないほど高価なものですので,金銭的にも非現実的な選択と
なってしまいます(2002年末の時点で,非圧縮で1TBのバックアップ可能な装置は
200万円くらいです). これは何も個人レベルだけに限定された問題ではなく,バックアップに対して 潤沢な資金をかけることの可能な一部組織を除き,企業レベルでもその高額な コストは頭の痛い問題でしょう.また,バックアップ所要時間も大きな問題 です.データ量が膨大な場合,テープドライブ単体では充分なスピードが確保 できないため,テープローダに内蔵するテープドライブ数を増やす方策を採る ことが一般的です.しかし,その性能向上はコスト的に見合わなかったり,複数 台使用しても要求仕様を満たせない場合もあります. そのため,きちんとバックアップに関する設計を行っていない場合,システムが 止まっても良い夜間にフルバックアップしようにも,朝までに終わらないという 問題が発生する場合があります. そのため,最近はディスクの内容を,別のディスクにバックアップを取るとい うことが行われ始めました.企業向け製品の場合ですと,最終的にはテープに 落とすけれども,ディスクを低速なテープドライブに対するキャッシュとして 使用する場合もあります. 話を個人用途に戻しますと,やはり労力をかけて複数メディアにバックアップする のではなく,簡単な操作で短時間にディスク全体をバックアップしたいと思っている 人が大半ではないでしょうか.かく言う私もその一人でして,さらに条件として, 『できるだけ安価に』も付きます.
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■ディスクを使用したバックアップ | ||||||||||||||||||||
■バックアップ媒体としてディスクを使用する是非 | ||||||||||||||||||||
バックアップメディアとして理想的な要件は,バックアップ対象に対して
充分な容量を持ち,非使用時に内容が安全な状態にすることが可能で
あり,かつ,長期保存に適することでしょう.このような用途に利用可能な
メディアとして様々なリムーバブルメディアが売られていますが,個人向け
の物の場合,大抵は容量的な問題がネックとなって来ることは繰り返し書い
た通りです. そこで大容量ディスクのバックアップを大容量ディスクで行えば良い のではないかという結論に達するわけですが,いくつか問題が発生します. 『ディスクはいつか壊れるもの』という見地からバックアップするのに, 同じくクラッシュという危険のあるディスクを使用する是非です. おそらくこの問題に関しては2つのアプローチが取れると思います. 1つは,ディスクに冗長構成を持たせ,ハード的/ソフト的な仕組みを 利用することにより,ディスクそのものの信頼性を向上させる方法です. RAIDと一般に言われる手法ですが,例えば RAID1 のミラーリングを 用いれば,透過的にディスクの内容を別ディスクに 常にコピーしておくことが可能です.PCの世界ではRAIDと言うと,とかく 高速化を狙った RAID0 のストライピングを指すことが多く,この構成では アレイを構成するディスクが1台クラッシュしただけでもデータ喪失に繋がって しまいます.しかし,RAID は本来,安価なディスクを複数使用して冗長 構成を取ることにより,パフォーマンスの向上と信頼性を目指したもの です.RAIDレベルとして 定義されている,RAID1〜RAID5 や RAID 0+1 を使用すれば,たとえ1台ディスク がクラッシュしたとしても,データ損失はありません. 広義に解釈すると,RAID1 はバックアップの範疇に含めることが可能だと 考えられます.しかし,ここではデータバックアップ後に,メディアは 非稼働状態で保管しておく方法を検討し,RAIDを使用しない方向で 考えることにします.
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■ディスクを大容量メディアとして利用する | ||||||||||||||||||||
この方法は,接続している一部のディスクを作業用として利用するのではなく,
データのバックアップ先として利用する方法です.つまり,ディスクが2台利用
可能である場合,1台を作業用ディスクとして使用し,別の1台は作業用ディスク
の内容をバックアップする目的にのみ利用するという方法です. 実現するために必要な条件は,バックアップ用のディスクは作業用ディスク よりも同容量,もしくは大容量であることくらいです.しかし,デメリットも あり,前述のRAIDによるミラーリングと異り,手動,もしくはソフトを用いて 適時データをコピーしなくてはいけません.また,バックアップ用に使用する ディスクを本体に内蔵し,常に通電した状態で利用する場合,取り付け用に ベイを使用しますし,使用していないときにも電力を消費します.その他,常に 稼働状態にあるということは,それだけ事故に遭いやいことや,ベアリングの 摩耗による経年変化の影響も受けやすいでしょう. この問題を避けるための方法としては,ディスクを外付けにし,非利用時には 取り外して電源を落としておくことを可能にすることが考えられます.ただし, IDE でディスクを接続する場合,IDEの仕様上,ディスクを取り外すことはできません. そのため,ディスクの接続形態としては,SCSI(ただし制限有り)やUSB接続にする 必要があります.
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■バックアップシステムの検討 | ||||||||||||||||||||
■バックアップの方針を考える | ||||||||||||||||||||
まず私の使用中の Terminator の場合,PCIスロットは SCSI および ビデオ
キャプチャカードで埋まっているため, 拡張カードを追加することはできま
せん.また,ベイは既にHDD*2,FDD,DVD-ROMドライブで埋まっているため,極力
ディスクは外付けにしたい所です.最悪の場合,FDDやDVD-ROMを外して内蔵HDD
4台体制で行くことも可能ですが,こうなりますと電源に対する負荷が心配にな
ります.内蔵する場合,バックアップ時以外は電源を落としておきたいと考えて
いますので,IDE 接続も不可ということになります. 一方,バックアップ対象となるディスクは,120GBのディスク2台です.全ての 領域をバックアップせず,必要な部分のみをバックアップする計画ですが,それ でも220GB(100GB+120GB)ほどの容量が必要であると見積もりました.また,それ ほどお金をかけずに行いたいため,外付けのSCSIディスクは候補から外しました. その他にも要求仕様はいくつかありますが,要点を整理しますと,
と,いうことになります. |
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■構成を考える | ||||||||||||||||||||
バックアップを検討しはじめた時点(2002年の秋)で,MAXTOR から 250GB,
320GB という大容量のディスクが発表されていましたが,まだ出荷はされてい
ませんでした.そのため,120GB IDE ディスクを2本を使用してバックアップを
行うことにしました.(160GBディスクは販売されていましたが,220GBを記録
するためには2本必要とするため,導入するメリットはありません) ハード的な構成としては,以下のような方法が考えられます.
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■IDE ディスクを外付け SCSI ディスクとして使用する | ||||||||||||||||||||
SCSI ディスクがサーバ用途に特化し,パフォーマンスや信頼性が追求される
ようになってから,IDE ディスクとの価格差は開く一方です.一方,IDE はその
仕様上ケーブル長の制限があり,ドライブを外付けにするのは困難です.そのた
め,個人で十分納得できる価格帯で外付けディスクとして利用できる製品は殆ど
存在しませんでしたが,変換ブリッジを使用することにより,
IDE ディスクを本体側から SCSI ディスクとして利用可能な製品が販売され
始めました.現在
一般に売られている USB や FireWire で接続するディスクも同じ方法を
採用しており,コスト的な面をクリアしています. 今回購入し,使用したものは,玄人志向から発売されている,IDE ディスクを 外付け USB(1.1)/Ultra SCSI 接続で使用可能にするキットである, GAWA-DDDSCSIUSBです. 元々はメルコから販売されて いた,外付けディスク用の,ガワだけを単体売りしているものです. 日本橋で約1万円で購入.ショップの人に BigDrive の対応状況を聞いたの ですが,『ハイ大丈夫ですよ』とのこと.メルコからは 40GB くらいのディス ク内蔵で売られていたものですので,この答えの信憑性は『?』です…
結論を先に書きますと,USB 接続で利用する際には,専用ドライバが必要となるため, Linux(Vine 2.5β2)では動作しませんでした.SCSI 接続では問題なく 使用できましたので,SCSI で利用することにしました. USB接続であればホットプラグも可能であったのに…残念です.
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■IDE ディスクを内蔵 SCSI ディスクとして使用する | ||||||||||||||||||||
GAWA-DDDSCSIUSB の2台構成でも良かったのですが,ちょっと別のことも考え
まして,ディスクを内蔵することにしました.用意したのは IDE HDD の
リムーバブルケースと,
ACARD Technology 製 AEC-7720Uです.
なお,AEC-7720U はファームをアップデートすることにより,BigDrive に対応します.
購入した物が未対応のファームであった場合,
ファームウエアのダウンロードページ
からファームをダウンロードし,アップデートしましょう. 購入価格はそれぞれ5,480円,9,800円でした.現在 AEC-7720U の価格はかなり 下がっているようで,7千円弱で購入できるようです.
以上で IDE ディスクをリムーバブル化する基本的な作業は終了です.直接ベイに ディスクを取り付けず,何故リムーバブルケースを使用したかと言いますと, バックアップ作業時以外はディスクの電源を落としておきたい ためです. とは言え,そのまま IDE ポートに接続したのでは,PC 稼働中にディスクの 電源を落とすことは出来ません.そこで,以下に説明する IDE->SCSI 変換ブリッジを取り付けます.
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■IDE ディスクを外付け USB ディスクとして使用する | ||||||||||||||||||||
Linux は Kernel version 2.4 以降で USB 機器をサポートしており,
ストレージ系ですと,USB mass strage class として利用可能なデバイスは
基本的にそのまま利用可能です.ある意味,Linux でも USB 機器がかなり
使えるようになって来たと実感させられます.(2003年2月の時点で USB Hub
を正式サポートしていないのは少々驚きですが) ただし, USB 周りのドライバはまだ開発途上のものですので,ドライバの バージョンや,使用機器によってはきちんと動作しない可能性もあります. 以下で解説する SOTO-3.5iUB も,Vine 2.5β2に含まれていたドライバでは 認識はするものの完全には動作せず,Vine 2.6r1 (kernel 2.4.19-0vl26)に 含まれていたドライバで,はじめてきちんと動作しました.逆に Kernel を上げたら動かなくなる機器もあるようですので,アップデートは慎重に 検討してから行ってください. 同種の製品が USB mass strage class として使用可能であるかは, Windows 2000 等で利用する際に,ドライバが不要であるかどうかでも確認 できます.余談ですが,最近のデジカメは,USB mass strage class に対応してい る製品が多く,Linux からディスクとして認識し,撮影したファイルを読み込む ことが可能なものが多いでしょう. 今回購入した,IDE ディスクを外付け USB ディスク化するケースは, I/O Data 製の挑戦者ブランドの製品です.製品仕様に関しては, SOTO-3.5iUBのページを参照してください.ダイレクト通販で購入可能で あり,私は7800円で購入しました(期間限定特価.平時は8800円).なお,店頭売りは 直営店以外ではしていないかもしれません. スペックとしては,I/O data の独自規格の iConnect,もしくは USB1.1/2.0 に IDE ディスクを接続可能なキットであり,BigDrive対応となっています. なお,この製品はイロイロと組み立て方法に癖がある製品ですので,まずは 上記ページからマニュアルを落とし,熟読してから作業を行った方が 良いでしょう.
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『ファイルのバックアップを考える4【ハードディスク編2】』 へ続きます