■多難な AthlonXP の冷却 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
■前回の試行のおさらいと今回試行の目的 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
前回,K7DDR における静音化の検討 【CPU クーラー1】 ページにまとめたように,AthlonXP 1800+ (VCore 1.5[V])を定格で使用した 場合の冷却に関しては,静音化を両立した上で一応の成功を見ました.しかし, BIOS 設定で容易に行うことのできる,FSB 166[MHz]化によるオーバークロック 動作に関しては,常用にはやや不安を感じるという結果になりました.そこで 今回は,このようなオーバークロック時であっても安定稼働可能であり,かつ, 静音化もある程度両立した状態を志向した環境を作るべく,試行してみました. | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
■シリコングリスを変える | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
■シルバーグリス | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
こちらのページにも書いたように,
シリコングリスは CPU が発した熱をヒートシンクに伝導させるとても
重要な役割を果たしています.そしてその性能は熱伝導率で表し,この
数値が高いほど熱を伝えやすいということを意味しています. 銀や銅,アルミの粉末をシリコングリスに混ぜ,高い熱伝導率を誇って いるものが売られているのは広く知られおり,その種類も最近は数多くの ものが店頭に並んでいます.また,『シルバーグリス』と一般に呼ばれて いるこの手の製品の効果として,『塗るだけで CPU 温度が3度も下がった』 のような話も散見します. 今回,まず最初のトライとして,熱伝導率の高いシリコングリスを使用し, CPU クーラーの性能を極限まで引き出すことを試してみます.
ごく普通のシリコングリスは 100円程度で売られているのに対し, シルバーグリスは値段的にはかなり高くつきます.また,金属粉を混ぜ ていることから,その粘度も高くなります.若干高くなったとしても, 塗布用のヘラが付いているものを選ぶと良いでしょう. |
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■シルバーグリスの効果を見る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
それでは,シルバーグリスの効果を実験によって検証してみます.
まずは効果の比較用に、 FalconRockII に同梱されていたシリコングリスを使用
した場合を見てみます. なお,室温は 26.5度の状態で FalconRockII を吸気状態で使用し, CPU はAthlonXP 1800+(Vcore 1.5[V])を使用. PCIスロットは前回同様,上側は空けた状態で実験を行っています.
(ケースファンの回転数は MAX:2884rpm)
次に,今回購入したシルバーグリスに塗り直しての実験です.
(ケースファンの回転数は MAX:2884rpm)
効果があるどころか逆に CPU 温度の上昇を引き起こしています.過負荷試験は 途中で中断しました.この結果はシルバーグリスを盛りすぎたため引き起こ されたのではないかと考え,薄く塗り直して再度トライしました.
(ケースファンの回転数は MAX:2884rpm)
とりあえず午後のコーダは完走するようになりましたが,ノーマルの グリスと比較して,明らかにパフォーマンスが悪くなっています. それでは,今回の目的である FSB 166[MHz]のオーバークロック状態での 温度上昇を見てみます. (ケースファンの回転数は MAX:2884rpm)
高負荷の実験は1分で中断しました.C.O.P.は90度で発動しますが, その温度に限りなく近くなっています.これではとても安心して使える 温度とは言えません.何よりも,元のノーマルのシリコングリスの方が はるかにマシです. このようになった理由はいくつか考えられますが,シリコングリスの 熱伝導率が正しいと考えた上での結論としては,
また,シルバーグリスを除去しようとティッシュで拭き取った際に,コア周辺 にコンパウンドが散らばってしまい,散々でした.AthlonXP は コア周辺に 表面実装のチップも乗っていることから,きちんと除去できないと ショートの危険性もあります(実際,1度きちんと立ち上がらず,爪楊枝で 念入りに取り除いてようやく起動しました). 非常に残念な結果ですが,シルバーグリスの利用はあきらめ, 取り扱いやすい普通のシリコングリスを使用することにしました. |
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■CPU ファンを変える | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
■CPU クーラーの性能とファンの性能 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
こちらのページでも若干触れた通り,
CPU クーラーの基本的な冷却性能は,ヒートシンクの性能とファンの
エアフローによって確定します.つまり,同一のヒートシンクを使用した
場合であっても,より風量のあるファンを利用することにより,冷却能力を
向上させることが可能となります.ある意味,DORACO-XP の方が
FalconRockII よりもオーバークロック時に安定動作していたのは,ファンの
性能に依る所が大きいと考えられます. そこで FalconRockII のヒートシンクの性能は充分だと考え,ファンを より高性能なものに交換することにしました.しかし,『高回転型』のファン を使用した場合,確かに風量は増加しますが,その分騒音も激増します. 静音化も併せて考慮する意味で,一般に『静音ファン』や『標準ファン』と 位置付けられるタイプの,騒音レベル 30[dB]前後のファンを調達して実験 することにしました.使用したのは以下の2種類です. まずは定番の SanAce ファン.
次にこれも人気のある Panaflo ファン.
FalconRockIIに元々付いている静音ファンは, F.T.C製の Model:FD08025B1L というファンで,12[V]時に 0.09[A]消費します. ファンの回転数は2300rpm,エアフローは27.99[CFM]となっておりますので, エアフローの単位を[m3/min]に換算すると,0.79[m3/min]となります.つまり, これと今回使用する SanAce,Panaflo を比較すると,それぞれ 1.3倍,1.4倍の エアフローがあるということになります.かなり期待できそうです. |
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■SanAceの効果を見る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ファンの交換は至って簡単です.FalconRockIIのファンを外し,新しい
ファンをはめ込んでファンガードも含めてねじ止めするだけです.なお,
ファンとヒートシンクの間に若干の隙間が開きますが,ここはアルミテープ
で塞ぎます(この効果は絶大でした.元々付いていたファンでも,隙間を塞げば
かなり効果があると思います).
室温は 27.1度.その他の条件は,シルバーグリスの実験と同じ条件で
行っています.
(ケースファンの回転数は MAX:2884rpm)
次に,今回の試行の目的であるオーバークロック状態での実験です.
(ケースファンの回転数は MAX:2884rpm)
劇的な冷却性能の改善が図れました.オーバークロック時にも,ノーマルファン, ノーマルグリス使用時の定格動作時とほぼ同じくらいの温度まで冷却できています. この状態であれば,常用も問題無さそうです. 心配していた騒音ですが,FalconRockII よりは大きく, DORACO-XP の最大回転時 よりはかなり小さいといったレベルです.騒音の質も比較的低音ですので,耳障りな 音ではありません.静音を極めた TU と比較してしまうと少々分が悪いですが,静音化 を志向したデスクトップマシンとしては,かなり優秀なレベルだと思います. |
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■Panafloの効果を見る | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
次に, Panaflo ファンです.こちらは SanAce よりも若干風量が多く,かつ,
騒音も大きくなっています.FalconRockII への取り付け方は同様で,実験時の
条件も同じです.
(ケースファンの回転数は MAX:2884rpm)
次に,FSB 166[MHz]に上げたオーバークロック時です. (ケースファンの回転数は MAX:2884rpm)
エアフローが SanAce よりもあるためか,冷却性能はこちらの組み合わせの 方が上です.3度〜4度ほどCPU温度の低下が見られます.しかし,その分騒音は 大きくなっています.また,その質も SanAce と比較すると少々高い周波数の 音です.DORACO-XP のファンがフル回転したときと比較するとかなり静かだと 言えますが,静音化を施した TU と比較してしまうと,かなり騒音が気になり ます.一般的な例えをすると,かなり気合を入れて静音化した AthlonXPベース のマシンと同程度といった感じです. それでは次に,ケースファンを BIOS 制御下に置き,Q-FAN コントロールした 際の冷却性能を見てみます.CPU を定格,FSB 166[MHz]それぞれの状態で 午後のコーダを10分間動かし,高負荷状態時の温度を見てみました.
(ケースファンの回転数は Q-FAN コントロール)
K7DDR の場合,ケースファンコントロール用の Q-FAN はかなり鈍感なようで, M/B 温度がかなり上昇しない限りは回転数が目立って上がりません.そのため, ケース内温度が上昇しやすく,それに伴って CPU 温度,M/B 温度共に高めに なります.とは言え,オーバークロック状態であっても,このくらいであれば 十分夏は乗り越えられそうです(M/B 温度がさらに上昇した場合,ケースファン の回転数は上がるため,室温10度上昇時にそれぞれ10度づつ上昇とは考えにくい). |
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■まとめ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
今回,オーバークロック時でも安定して動作する環境を目指して試行錯誤を
行いました.その結果,FalconRockII のファンを交換することにより,冷却
性能において実用上問題ない構成を見つけることができました.しかし,その
代償として,若干静音性が犠牲になりました. とは言え,十分納得の行く騒音レベルに収まっていることも あるため,個人的には満足しています. また,今回は試していませんが,FalconRockII のノーマルファン使用時に, アルミテープ等でヒートシンクとファンの間の隙間を塞ぐと多少パフォーマンスが 改善されるかもしれません. ['03/07/22 追記] 小坂氏よりメールを頂きまして,お勧めの静音 CPU クーラーを ご紹介頂きました. Igloo SilentBreeze462です. ファンの騒音が 19[dB] と極めて低いわりに,AthlonXP 2700+ にも対応している ほか,7cm角のファンを搭載していてサイズもコンパクトにまとまっています. PC HEVOの CPU Cooler Maniacs で検証された データを 見たところ,冷却性能は若干 FalconRockII に劣るようですが,絶大な静音性, コストパフォーマンスで絶賛されております. |