静音化とファンレスの検討1 (全体的な方針とケースFAN編)

■動作音の静粛化を目指す
■最近の自作 PC のキーワード 『静音化』
 少し前のPCに求めるもののキーワードとしては,『小型・高機能・ 高性能』でしたが,最近は『小型・高機能・高性能・安定・ 静粛』になって来たような感じがあります.

 頂上を目指すオーバークロック文化(爆音を 響かせる高回転FANを搭載し,極限まで冷却し,少しでもパフォーマンスを 上げようと試みる)と対局の, VIA C3 をはじめとするパフォーマンスが 若干劣るけれど低消費電力のCPUを使用し,場合によってはクロックダウン し,静音マシンを自作することがはやり始めています.

 しかし,少しでもパフォーマンスの良いPCにしたいのは誰でも同じだと思い ます.そのため,CPUファンやケースファン,HDD等を少しでも静かなものに 交換し,静音PCを作ろうと試行錯誤している人が多いのではないでしょうか.

■騒音の発生源
 一般にPCの騒音の発生源は,各種のFAN,そしてディスクです.

 ディスクは静かなことで定評のある Seagate バラクーダ IV シリーズ を使用したり,後述する静音ケースに納めたりすることにより,低騒音化が可能 です. 一方 FAN に関しては,CPU FAN,ケースFAN,電源FANの3つ.場合によっては VGA カードのチップ冷却FANも含めて4つが騒音源として存在します. これらを無くすことにより,騒音を原因から取り除くことは可能ですが,そうする と『安定性』や『パフォーマンス』を犠牲にしかねません.また,無くさないまでも 静音FANに交換するという手もありますが,静音FANは一般に 風量が小さくなり,冷却能力が劣ります.静かな PC であっても,きちんと 廃熱できずに不安定となってしまっては元も子もありません.

 また,極限まで突き詰めていくと,電源のFANの問題を避けては通れません.

 一般に一番廃熱を真剣に考えなければならない部分は電源ユニットであり, この部分の冷却が不十分であると,発煙や発火,故障や寿命が短くなる等 の問題が発生してしまいます.最近は静音電源のリリースが盛んであり, 温度に応じてFANの回転数をコントロールする機能が搭載されていたり,元々 音の静かなFANを使用しています.しかし,FANが装備されていないPC用 電源は,一般に入手することは困難でしょう.これは,単体で電源ユニットを リリーする場合,どのような使われ方/負荷がかかるか分からないため, ある程度冷却に余裕を見ておかなければならないからです.

 前振りが長くなりましたが,Terminator では FANレス電源が使用されて いるため,この部分の対策を取る必要がありません.これは,負荷がある 程度限定され,かつ,ケースFANも含めてエアフローをきちんと考慮した ケースとセットで使用されるために実現出来たことです.
 また,一通りの機能はオンボードで搭載されているため,FAN付きのVGA カードなどを追加しなければ,騒音源が増えることはありません.

 そのため,Terminator で PC を組んだ際に問題となる騒音源を列挙 すると,

  • HDD
  • CPU FAN
  • ケースFAN

 の3つになります.

 ※ケースFANは 9cm というやや大きめのものが使用されているため, 回転数を落としても風量が確保できるというアドバンテージがある他, M/Bから電源を取ることにより,その回転数を内部温度に応じてコント ロールし,低負荷時には騒音を減らすことが可能です.ただし,FAN そのものの品質…と,言いますか,騒音に問題があります(詳しくは後述)

■ファンの騒音対策
 ファンが発生させる音を抑えるためにはいくつかの方法がありますが, 大きく分けて以下のような3つの方法に分かれます.

  • 空気を流れやすくする
  • 回転数を落とす
 前者は,空気の通り道をきれいにし,スムーズに風が通るようにするというこ とです.このようにすることにより,風切り音が軽減されます.具体的には, ファンの前のスペースに障害物が来ないようにしたり,ケーブル類を束ねたり, ファンガードをより抵抗の少ないものにするのようなことが効果的です.

 後者は,ファンの騒音は回転数の3乗に比例することから,回転巣を落とし て静粛にしようということです.具体的には,ファン自体に供給する電源電圧 を落としたり,定格で回転数の低いファンに交換するなどが行われます.

 その他,ファンを無くすという究極の方法もあります :-)

 今回はこの全ての方法を併用し,パフォーマンスを犠牲にせず,Terminator をギリギリまで静音マシンにする方法を検証しました.

■ケースファンの交換
■静音タイプのケースファン
 前述したように,元々取り付けられているケースファンはかなり五月蠅い 部類になります.そのため,まずはこのファンの交換から検討&実施し, 交換によって冷却に問題が発生しないかを検証してみます.

 今回実験に使用したファンは,元々取り付けられていたファンも含め, 以下の4種類です.

画像 型番 回転数 定格
AVC C9025S12H
(元々付いていたFAN)
?? 12V 0.3A
Enermax UC-9FAB 1200rpm〜2500rpm
(半固定抵抗で設定)
12V 0.27A
ADDA CF-90S 2050rpm 12V 0.13A
Justy DSF-92L 2000rpm 12V 0.18A

 全て12V駆動のファンです.回転数/騒音は一般に消費電力に比例しますが, 必ずしもそうとは言い切れない場合もあります.また,フィンの形状によっても,騒音 や風量が変化します.

■ケースファンの交換
 ケースFANの交換は至って簡単です.ケース裏側のFANを固定している4つのネジを外して FANを取り外し,新しいFANを取り付けてネジ止めするだけです.


Enermax UC-9FAB を取り付け

 後はFANの電源をM/Bから取るか,電源から直接取るか決めます.

 FANにセンサ付きの 3pin コネクタが付いている場合は,M/Bから直接電源を取る ことにより,CPUやケース内温度に応じて回転数を自動的に制御することが可能にな ります.

 一方,電源から直接電力を供給する場合,常に一定の回転数で稼働することに なります.接続方法ですが,3pin のコネクタを,通常の 4pin のディスクなどに接続す るコネクタに変換するアダプタが FAN に同梱されていると思いますので,これを使用します.

 どちらの接続方法が良いとは一概には言えませんが,M/Bから電源を供給した場合, 使用するFANによっては,M/B の温度が上がりすぎてしまう場合があるようです.私の 場合は,静音FANであれば,回転数をコントロールしなくても十分に静かなため,電源 から直接取るようにしています.

■ファンガードの取り付け
 FANの周りの障害物は騒音(風切り音)の元であるという話は前述しましたが, そういった目からケースFANの排気口を確認してみましょう.実際に Terminator を 起動し,耳を近づけたり手をかざして風圧を確認したりすると,色々なことが分かると 思います.

 一見しただけでも分かるとおり,この部分はケースのシャーシを加工して, ファンガードとして機能するように加工してあります.しかし,このような形状は 一般に負荷が大きく,風量を損なうだけでなく,騒音発生の元です.実際に手を かざしますと,排気は後ろの方向にじかに出ておらず,ファンガードに当たってから 上下左右に拡散して排気されているのが分かると思います.

BKi810 のケース加工でも 大活躍したハンドニブラーを使用して,ファンガード部を切り取る.

丈夫なニッパ でも加工できると思いますが,手を切らないように注意

ファンガードを取り付け.9cmFAN用は100円くらいです.

なお,Enermax のファンには,吸気側にケーブルを巻き込まないようにファンガードが 付いています.他のファンを使用する場合でも,同様に両側に取り付けた方が良い でしょう.(この写真では,一時的に吸気側のファンガードを排気側に付けてみました)

 もちろん,ファンガードを取り付けない方が FAN にかかる負荷は低くなります. しかし,安全上の問題で,取り付けた方が安心でしょう.一般に市販されている ファンガードは,針金状ののものを加工して作られているものが多いと思いますが, デフォルトの状態よりも確実に騒音が減り,風量がアップします.

■検証
■騒音について
 多分に感覚的な評価ですが,稼働音の大きさ(電源からじかに電力を供給し, 定格で稼働させた際の騒音)を評価すると,次のような感じです.

(『☆』が多いほど,静か)
AVC C9025S12H ☆☆
Enermax UC-9FAB
(最小回転数)
☆☆☆☆☆☆☆
Enermax UC-9FAB
(最大回転数)
ADDA CF-90S ☆☆☆☆☆
Justy DSF-92L ☆☆☆☆

 Justy DSF-92L であっても,十分に静かです.PC が静かに動くという ことが,どれほど心地よいかというのを試してみて実感しました.

 最終的には Enermax UC-9FAB を最小回転数で動かすことにしたの ですが,動いているのを忘れるくらい静かです.5m以上離れて設置され ている PlayStation2 の騒音が爆音に聞こえるくらいの差があります.

■冷却効率について
 静音化したとしても,CPUやケース内を十分に冷却できなくなっては 意味がありません.CPU FAN 編 と一部話が重なってしまいますが,各ファンを使用した際の CPU 温度, M/B 温度を Asus Probe を使用してモニターしてみました.

 負荷をかける方法としては,30分間 DVD を再生する方法を試しました. この方法は,CPU の他に,DVD-ROM も稼働させて発熱させますので, 一般的な PC 利用の中で定常的に高負荷をかける良い方法ではないか と思います.なお,CPU 負荷を100%使い切り,高負荷状態での 状態をチェックする場合は,Superπ 等を走らせてチェックした方が良いでしょう.

 なお,OSは Windows2000を使用し, CPUとして は手持ちの Socket370 用CPU の中から Pentium3 650MHz を使用.ケースFANは Enermax製, Justy製(M/Bから電源供給すると騒音が激しかったため) 以外はM/B から 電源供給して回転させ,CPU FAN はFSCUG9C-6FC を使用して 計測を行っています.

室温20度での冷却効率の検証
使用したケースFAN CPU 温度 M/B 温度
Enermax UC-9FAB
(最大回転数)
31度 39度
Justy DSF-92L 32度 45度
AVC C9025S12H 33度 44度
ADDA CF-90S 34度 46度
Enermax UC-9FAB
(最小回転数)
34度 48度

 このように,ノーマルファン(AVC C9025S12H)から別のファンに交換したとしても, 特に冷却上の問題は発生しない範囲内に収まっていることが分かります.

 また,Enermax UC-9FAB であれば,室温が低いシーズンは最小回転数で 稼働させ,夏場には回転数を上げるようにすることにより,かなりの室温の幅に 対応できるということも分かりました.

■完全ファンレス化は可能か?
 電源にFANが内蔵されていないと言うことで,低発熱な CPU と組み合わせ,完全 ファンレスでの稼働を目論む方がかなりおられると思います.そこで,手持ちの CPU の中で比較的低発熱な Pentium3 650MHz,Celeron533A を使用し,完全ファンレス 化の実験をしてみました.なお,CPUは,サーマルコンポーネント製ヒートシンク, 85EX60X80を使用しています.

※ あえて書く必要も無いかと思いますが一応 書いておきますと,『CPUファンレス』は『CPUヒートシンクレス』という意味ではありません. ヒートシンクすら付けない状態で通電しますと,発熱のために最悪 CPU を壊してしまいます.

室温20度で DVD Video 再生で検証
CPU CPU温度 M/B温度 備考
Pentium3 650MHz 45度 59度 再生10分後この温度になり,さらに上がり続けていたので計測中止
Celeron 533A 49度 61度 再生10分後この温度になり,さらに上がり続けていたので計測中止

※それぞれの計測は十分に冷えるのを待ってから 行いましたが,何故かCeleron533Aの方が熱くなりました

 Asus Probe で温度上昇を確認しながら行ったのですが,安定する気配が無く, 危険を感じたために断念しました.Celeron533A は FC-PGA 版のCPUの中で 最も消費電力が低い CPU (11.2W) でファンレスが出来ないとなると,Terminator TU でのファンレス化は難しいかもしれません.Terminator P3 であれば VIA C3 も稼働 するため,こちらであれば何とか動くかもしれませんが….

■まとめ
■まとめ
 ケースFAN交換による低騒音化を検討したわけですが,騒音および冷却効率の 点からは,(個人的には) ADDA CF-90S,または Enermax UC-9FAB が良いだろう という結論になりました.値段的に見ると ADDA 製の方が 500円 程安く購入可能で すので,コストパフォーマンス的にはこちらの方が良いでしょう.

 しかし,私は騒音が最も低い Enermax 製を採用し,最低回転数で 24時間稼働 させることにしました.これまでは就寝時の騒音が気になり,なかなか PC の終日運転の 踏ん切りが付かなかったのですが,これであれば問題ないレベルです.

 これから夏を迎えるに辺り,気温が上昇してきます.今後問題が発生した場合は, 回転数を少し上げるという手を講じようと考えています.


Enermax UC-9FAB 回転数設定用の半固定抵抗と電源コネクタ


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