USBを使用しての拡張[10] ドキュメント・スキャナ

[06/02/05] アップ [05/10/31] 初稿
■ペーパーレス化の夢
■ペーパーレスを考える
 コンピュータディスプレイの大画面化や高解像度化に伴い,昔は大きなファイルを 小さな窓から覗き込むようなイメージで使用していた PC も,普通に机の上に広げた 紙を一覧するのに近い情報量を一度に表示可能になってきました.もちろん現在も, 紙メディアでしか実現しにくいものがあったり,紙ベースの方が使い勝手の良いもの もあるわけですが,大抵の情報は, PC 上で電子的なデータとして完結させる ことが何かと便利になってきました.特に占有する物理的スペースと検索性という 意味では,電子的な情報の方が大きなアドバンテージがあると言えましょう.

 新規に作成するドキュメントは極力ペーパーレス化を進めるにしても, 既に机の上 やキャビネットの中で物理的スペースを占有している文書を電子的な情報に変換し, 一気に廃棄&スッキリしたいという欲求は誰しもあるのではなかろうかと思います. 一応,スキャナは廉価なものも各メーカーから出ていますし,そこそこ普及している ように思いますが,なかなか実現しにくい.何故うまく行かないかと言うと, こちらで解説したようなフラットベッドスキャナを 利用したのでは,スキャンの手間がかかり過ぎ,途中で挫折してしまうことが多いから です.事実私も10年程前に試みて挫折し,また,同様の結果に終わった人の話はよく 聞きます.

 実際に試みた人であれば身に染みて分かっていると思いますが,例えばA4のドキュメ ント100ページ分を電子化しようとしたら,1ページずつスキャン台に乗せ,スキャン, 保存,次のページを…なんてことをやっていては日が暮れてしまいます.重要な ドキュメントを少しだけスキャンするのであれば何とかなると思います.しかし,既に 膨大な紙資産を抱えている人にとっては,紙の束は目の前にそびえ立つ,頂上の見えない 山のように感じられるのではないでしょうか.

 主にオプションパーツとして販売されているADF(Auto Document Feeder.自動紙送り 装置(?))は, 正にこの労力を劇的に低減するためのスキャナ用のオプションです.FAXであれば,家庭向け のものであっても標準搭載されています.しかし,PC用スキャナに目を向けてみますと, 最近は主に企業向けのハイエンドスキャナにしかこのオプションは用意されていないことが 多くなってきています.また,仮に購入できる価格帯であっても,大抵は家庭向けFAX同様, 片面のスキャンにしか利用できませんので,両面印刷された書類の自動スキャンは, 『書類をセットして後はボタンを押すだけ』のような手軽さには到りません.

 この辺り,個人で出せる金額で何とかならないかなぁと悩む人は多いかと思いますが, そんな人に打って付けなのが今回ここで紹介するドキュメント・スキャナです.

■ドキュメント・スキャナ
 『ドキュメント・スキャナ』の明確な定義は無いように思いますが,ここでは, 『ADFが付き,自動的にページ送りをしながら複数枚のドキュメントをスキャン可能』な スキャナを指すことにします.フラットベットスキャナにADFを付けたものも広義では 『ドキュメント・スキャナ』と呼べると思いますが,本ページで解説するのは, 『ADF+両面自動スキャン』という組み合わせに絞ることにします.

 このような製品は,ヘビーユーザーが多いであろう企業向けに多くの製品が出てい ます.しかし,企業向け製品は高機能&高耐久性であるものが多いのですが,その分, 価格に跳ね返ってきています.懐に余裕のある方はこの手の製品を調達するのが良いと 思いますが,今回は『個人で出せる金額』という制限が加わりますので,あえて除外する ことにします.すると,殆ど1択に近い形になります.それが本ページで紹介する, PFUのドキュメントスキャナ,ScanSnapです.

■PFU ScanSnap fi-4110EOX2
 私の場合,製品を実際に使用してみて『おおこれは便利』とばかりにコンテンツ を書き始めても,実際にまとめ終わるまでに時間がかかり過ぎ,アップしたときには 既に生産中止の憂き目に遭っていることは珍しくありません :-).今回紹介する ScanSnap もその1つなのですが,幸いにして後継機種が出ており,基本路線はそのまま 継続しているので,気にせずに :-) アップすることにします.

 なお,現行製品は,Scan Snap S500 です.私が購入したタイプは,ハードもバンドルソフトも古いタイプで, ScanSnap fi-4110EOX2です.

以前はPFUのダイレクト販売でしか入手出来なかったような覚えがあるのですが, 今は店頭や,いくつかのオンライン販売でも購入出来るようです.
2003/6月(古っ :-< )に52,290円で購入.箱は結構デカイです.
内容物一覧.本体,ACアダプタ,ドライバ,Adobe Acrobat等のバンドルソフト, USBケーブルが付いてきます. 本体は割と小さいのですが,前面排紙のため,利用時はそこそこな面積を必要とします.
背面にACアダプタ,USBケーブル(USB1.1 Bタイプの端子)を接続します.
横から見るとこんな感じ.上から読ませたいドキュメントを給紙(MAX 50枚)します.
で,排紙は前面で,本体に収納されているトレーを伸ばします.
A4サイズをジャンジャカスキャンするときには更に伸ばすことに. 沢山排紙された際に引っかかってジャムるのを防止するためなのですが, 利用時にかなりの面積を必要とします.
給紙側も,沢山積む際には重さで倒れないよう,アダプタを引き出す必要があります.
手差し給紙アダプタ(と,呼んで良いのかな?)は分解できますので,仕舞う際には 小さくなります.現行機種は分解せずに,蓋をパタッと本体側に倒すようになっており, 埃の侵入も防げます.うらやましい…
本体側は至ってシンプルなインターフェイス.片面スキャンか両面スキャンかを 選ぶボタンしかありません.ボタンを押すとスキャン開始になります.
片面スキャンの場合はひっくり返してセット.
給紙トレイには,A5,B5,A4で紙を横から固定するアームを固定するためのマークが 書かれていますが,名刺〜A4サイズまでのフリーサイズに対応します.また,スキャナは ページ毎に用紙サイズを自動検出します.
用紙セット時に斜めに入れるとジャムるので注意(当然といえば当然ですが).
ジャムったときには本体横の青いレバーを押し,
スキャン部を開けて詰まった紙を排除します.
ジャムると巻き込んでグシャグシャになるときがあるので,重要な書類のスキャン時には 曲がって挿入しないようにきちんとセットしましょう.

 なお,スキャン方式は両面CCD.

■ソフト
ドライバ(TWAINではなく独自のもの)をインストールした後にUSBポートに通電したScanSnapを接続すると, タスクトレイに青丸に"S"のマークのアイコンが出ます.本体側からScanSnapが 認識されない場合,このアイコンに赤丸&斜線が表示されます.
タスクトレイのアイコンに合わせ,マウス右クリックをすると,メニューが現われます.

本体にドキュメントをセットした後に,このメニューから両面/片面スキャンを行うことも 可能です.その他,設定などはこのメニューから行います.

『設定』でまず行うのはアプリの設定.ドキュメントを読み込んでPDF化する 場合は,このように "Adobe Acrobat" にしておきます.
『保存先』を押し,スキャンファイルの格納先を指定します.
上の画面で『ファイル名の設定』ボタンを押すと,保存時のファイル名を設定出来ます. まとめていくつかドキュメントをスキャンする際に,

    1)ドキュメント1をトレイにセット
    2)スキャン開始
    3)ドキュメント2をトレイにセット
    4)スキャン開始

 とすると,2),3)の日付や時間を元に自動的にファイル名を付けることが出来るので, まとめて大量にスキャンする場合はとても便利です.なお,各ドキュメントが複数枚の場合, それぞれ複数ページを1ファイルにまとめたPDFファイルとなります.



『ファイル形式』では,PDF,JPEG等を選べます.なお,画面上に 表示されていますが,カラーモードが『自動』もしくは『白黒』の場合, JPEGはメニューから選べません
『原稿サイズ』では,どのサイズとして読みとるかを指定します. 基本的には『自動』で良いと思いますが,余白が大きかったり 斜めに挿入された場合は誤認識する場合もありますので,用紙サイズが 予め分かっている場合は,ここで指定しておいた方が良いでしょう.

『読み取りモード』では,読み取りモードとカラーモードを設定 します.読み取りモードはスキャン時の解像度とリンクしており, それぞれ150,200,300dpiに対応します.精細さ,ファイルのサイズ以外に, スキャンスピードにも影響します.

 次ぎにカラーモードですが,これは文字通り カラー原稿かモノクロ原稿かを設定するモードです.基本的に『自動』 にしておき,各ページ毎に自動認識させると良いと思いますが, 『モノクロ原稿に色ペンで書き込んでいるが,モノクロとして取り込みたい』 のような場合は,モノクロにしておく方が良いでしょう.

『ファイルサイズ』では,ファイルに保存する際の画像の圧縮率を設定します. 圧縮率を高めるとファイルサイズは小さくなりますが,画像は荒くなります. 小さい文字が潰れて読めなくなる可能性もあるので,あまり圧縮率を上げ すぎない方が良いでしょう.
原稿セット後,本体側のボタンをポチッと押すか,メニューからスキャン を実行すると,画面上にこのようなダイアログが表示され,進捗状況が表示 されます.

スキャン終了後,PDF形式で保存を設定している場合は Adobe Acrobatで変換&保存されます.Acrobatで修正したり,TIFF/PNGに 書き出すことも可能.

メニューから『消耗品の管理』を選ぶと,ピックローラおよびパッド のこれまでの使用回数が表示されます.交換の目安に達した際には,速やか に交換した方が良いでしょう.特にピックローラはアルコール洗浄等で メンテナンスをすれば多少寿命が伸びるかもしれませんが,紙の掴み損ね 等が頻発する原因になりそうです.

 消耗品はPFUダイレクト 等で購入可能です.パッドユニットが2千円弱,ピックローラは約6千円ほどです.

■実際に使ってみて
 実際に使い始めて感じたのは,『何故もっと早く導入しなかったのだろう』という ことです.書類をセットしてボタンをポチッと押せば後は待てばPDF化まで完了. 早速ガシガシ使い始めました.特に有り難いのは,その手軽さとスキャンスピード. 両面スキャンでありながら,解像度を落とせば1枚あたり4秒程度でスキャンが終わります

 仮にフラットベッドスキャナでやろうとしたら,原稿置いて〜スキャンして〜ひっくり返して〜 またスキャンして〜 と,その数倍は時間がかかることでしょう.また,最終的に PDF化され,複数ページを汎用的な1つのファイルにまとめられるというのも有り難い所です.

 一方残念な点は,PDF化するとは言え,画像として保存されること.OCRソフトを通して テキスト化することも可能ですが,その場合は誤認識との戦いになります.

 最近は認識率がかなり向上して来ているようですが,9年ほど前にOCRを試した際には かなり認識結果を手直しする必要があり,使用を断念した苦い思い出があります.当座は 画像として残しておけば,いずれまとめて(認識率が劇的に向上した)OCRで処理することも 可能だと思いますので,将来に夢を繋ぎつつ,画像として溜め込んで行こうと考えています.

 その他残念な点としては,湿気を吸った書類/貼り付きやすい紙や,皺の寄った雑誌の切り抜き 等は,やや注意深くスキャンを行う必要があります.前者は2枚一度に給紙してしまう (ダブルフィード)ことがままあり,後者の場合は給紙時に次第に傾いて吸い込まれる→ジャム ということがあります.まぁこれらはある程度致し方無い所だとは思いますが…

 それともう一点気を付けるべきことは,ドライバーが独自なため,普通の画像処理ソフトから 普通のTWAINスキャナとして利用できないことです.

 何れにしましても,総合的に見て『書類を大量にスキャンしたい!』と,いう方には お勧めの一品であることに変りはありません.お勧めの強度としては,『あると便利ですよ』 ではなく,『買うべし!』です :-)

■まとめ
 最近はフラットベッド・スキャナの値段が劇的に落ちて来ました.PFU製ドキュメント・スキャナ の現行商品である『ScanSnap S500』と同等の金額(約5万円)を出せば,コンシューマ 向けのハイエンドモデルを購入してお釣りが来るほどです.おまけにスキャン解像度は 9600dpi vs 600dpi と大きな開きがあり,そしてフィルム(写真のネガ・ポジフィルム) スキャン機能の有無等も見ますと,スペック的にはフラットベッド・スキャナの方が 遙かに魅力的に感じられます.

 しかし,スキャナ購入時には,用途を考えて機種選定をすることをお勧めします.

 これはこちらでも書いたことですが,汎用品は何れ の用途もそれなりにこなすが,特定用途は専用品には敵わないということです.逆に 言いますと,専用品は汎用品になり得ないので,『あれにもこれにも使いたい』という 方には向かないとも言えますが…(手間さえ惜しまなければ,フラットベッド・スキャナで 書類の電子化は可能だが,ドキュメント・スキャナではフラッドベッド・スキャナの代りは 出来ない)

 また,近年,法律により紙による保存を義務付けられていた文書をスキャナで取り込んだ 電子データでも保存出来るようになりましたが(『e-文書』),国税関連書類に関し ては,カラー文書の場合は200dpi/24bit color以上であることが求められています.( 参考リンク1参考リンク2

 このようなこともあり,SOHO をやられている方にも,この手のドキュメントスキャナは 打って付けではないかと思います.

 ただ,個人での利用を考えた際に悩ましいのは,書籍のスキャンです.
 個人的には,蔵書を全て電子化し,一覧性と物理的スペース(*1)(こっちの問題がかなり 深刻)の問題を解決したいと常々考えています.しかし,ドキュメントスキャナを使用 する場合,書籍をページ毎にバラさないとスキャン出来ません.また,日焼けし始めた 文庫本は心置きなく解体できますが(*),絶版本は『データ』としての価値だけではなく, 『物』としての価値もあるため,なかなかそういうわけにも行きません.フラットベッド スキャナでちまちまとスキャンして行こうかなぁと考えています.

    (*1)本の虫にとっては切実な問題.ここ数年はオンラインで買うことが多くなり,購入し た本の重さで肩が抜ける思いをしつつ帰宅することは少なくなりましたが,その分購入数が多 くなる傾向にあるようです…
    (*2)背表紙にアイロンを押し付け,糊を熱で溶かすとバラしやすいようです.

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